11/10/13 追記10.19 「転進」
皆さん、こんにちは。

気は進まないのですが、やはりここに書いておきます。
何かとんでもない頽廃が、言論の中で起っているように思うのです。下は私が神奈川県に住む仲間数人に送ったメールです。

From: Nomura
Sent: Wednesday, October 05, 2011 7:44 AM
To:
Subject: ソーラーパネルいつ?

野村です。
皆様、神奈川県民のはずですから、こんな記事を紹介します。
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[産経新聞]2011.10.02 20面
神奈川・黒岩祐治知事 ソーラーパネルいつ?
県民の関心の一つは、いつソーラーパネルが自宅にただで付くか。黒岩祐治知事が選挙公約で「自己負担なしで付けられるソーラーバンク構想」を掲げたためだ。
公約は修正。構想の枠組みを替え、「自己負担なし」は「限りなく軽減」に。黒岩知事は11月に県民と対話する予定で、「ただと言ったから待っているという話が出てくる。きちんと説明したい」と、疑問や批判に応じる構えだ。「正確さより分かりやすいメッセージで『早く付けてください』と言いたかった。厳密に違うといわれたら訂正したい」と弁明も。
「4年で200万戸分のパネル設置」の公約は55万戸分に減ったが、ほかの再生エネルギーや省エネ、蓄電なども推進して最大使用電力を減らし停電回避を目指す方向に転換した。しかし、この考え方は伝わりにくく次のメッセージが待たれる。
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私は黒岩さんの「公約」を聞いた途端、できっこない、デタラメだと思いましたが、やっぱりデタラメでした。
最近、この手の話が多いのです。嘘を恥と思わなくなりました。
55万戸というのも、おそらく実現しないでしょう。以上
 

その後、各紙に関連記事が出ました。

[読売新聞2011年10月8日]
「忘れて」太陽光200万戸公約、知事が撤回
神奈川県の黒岩祐治知事は7日、知事選以来掲げてきた「4年間で200万戸分の太陽光パネル設置」とする公約について、「あのメッセージは役割を終えた。忘れてほしい」と述べ、撤回した。(後略)

[毎日新聞 2011年10月8日(土)]
黒岩知事:太陽光発電「4年で200万戸」、選挙公約を撤回
黒岩祐治知事は7日、太陽光発電のパネル設置について知事選の公約で掲げた「4年間で200万戸分」について「(エネルギー危機を乗り切るための)メッセージの役割を終えた」と述べ、全面的に撤回する考えを明らかにした。(中略)
黒岩知事はこの日の予算委で「200万戸分は計画停電を起こさないために打ち出した数字。精査したものではない」と釈明。委員会後、記者団に「かながわスマートエネルギー構想を新たに出したことで、『4年間で200万戸分』は忘れてほしい。ただ、風力・水力・地熱などを合わせて、(200万戸分を)目指していく思いは変わらない」と話した。

毎日新聞3月30日付「これからの神奈川:’11知事選」によりますと、知事選の「公約」として、

<黒岩祐治氏>
・県民総力戦で、危機を救う神奈川モデルをつくる
・太陽光発電パネルを4年間で200万戸に設置
 「(パネルは)夏の電力不足に対応するために5万戸から15万戸ぐらい一気につけたい」(記者会見での発言)

とあります。
又、神奈川県知事就任後、最初の「所信表明演説」2011.5.19で、次のように述べています。(抜粋)

そして、設置者の負担がなくてもソーラーパネルの設置ができれば猛烈な勢いで普及するはずとの思いから「かながわソーラーバンク」の設立に向け、一丸となって取り組んでいるところであります。このプロジェクトは、単にエネルギー政策と環境政策を組み合わせただけではなく、雇用・産業政策としても効果の見込める取組みであり、「神奈川モデル」の新たな成長戦略ともなるものです。

4年間で200万戸分のソーラーパネルをつけたい、夏の冷房需要に間に合わせるために5万から15万戸分をつけたい、私は選挙戦を通じてそう訴えてきました。数値は示さない方が得策だと忠告してくれた人もいました。しかし、たとえ無謀に見える目標であったとしても、私は目指します。高い峰を目指してこそ、時代は変わる。私はそう確信しています。脱原発で太陽光の時代へ!神奈川からエネルギー革命を起こすのです。目指すは「太陽の神奈川」です。「太陽の神奈川」を県民総力戦で実現していこうではありませんか。

実に明確に「所信表明」しています。
その後、7月5日、産経新聞社主催で、「『心をつなごう日本』第2回提言シンポジウム」というのが開かれ、そこで石原東京都知事と、このような話をしています。

(産経紙より借用)

[黒岩知事]  宮城県の石巻市や岩手県の釜石市、大槌(おおつち)町などに延べ5万人を超える職員を派遣しています。神奈川県として一番重要なのは、エネルギー問題。東北に大災害が起き、日本に国難が訪れた。これをどう救うかが一番大きな課題。やるべきことはエネルギー革命と思い、3月16日に立候補を表明し、3月24日から選挙戦が始まり、一つ明確な政策を掲げました。それは太陽光発電を普及させていくことです。4年間で神奈川県に200万戸分のソーラーパネルをつけよう、と主張しています。エネルギー革命を起こし日本を元気にすることが必要です。選挙戦で、箱根、鎌倉に行くと、お客さんがいない。計画停電があると、旅館にお客さんが来なくなる。そうすると、旅館や観光事業者に壊滅的なダメージを与えてしまう。これは神奈川にとっても危機。救うのは、太陽光発電で、どうすれば、このメッセージが届くかと思ったとき、この言葉を口にしました。脱原発。

[石原知事]  反対です。

[黒岩知事]  福島第1原発がああいうことになった。電力がない。ボーッとしていると、日本の産業は崩壊する。危機を救うため、太陽光発電を一気に普及させていく。今やれることをスピード感を持ってやっていかないと、日本はだめになる。エネルギー革命を神奈川から起こそう。日本を救う神奈川モデルを作る。これが最大の仕事だと思って、邁進(まいしん)しています。

これほどの発言を、「忘れてほしい」とは、親しい仲間内でも言えませんよ。それを政治の場で平気で語る、言葉はそこまで堕落してしまったのです。黒岩さんは極端ですが、今は全体の風潮がそのようになりました。つまり、精査せず根拠の定かでないものを、平気で語るようになりました。実行する真実な責任感がないから、何でもしゃべるのです。

本論の本筋とは違いますが、黒岩さんは、「雇用・産業政策としても効果の見込める」とも言っています。
ソーラーパネル最大手メーカー・シャープの町田会長は、このように語っています。

[産業経済新聞社 2011年7月16日(土)](抜粋)
「(原発をめぐる混乱は)海外移転を考える企業にトドメを刺す。この状態が長く続けば、日本では製造業が成り立たない」。大阪商工会議所副会頭の町田勝彦・シャープ会長は、15日開かれた正副会頭記者会見で首相の発言を切って捨てた。再生可能な自然エネルギーのひとつである太陽光発電システム事業に力を入れる電機メーカーにとっても、原発は必要不可欠なエネルギー源だ。町田会長は「遠い将来、代替エネルギーが開発されれば、原発が不必要になる時代になるのかもしれないが、当面は原発なしで何ができるのか」と語気を荒らげた。

報道に、切って捨てた、語気を荒げた、の状況描写は余計ですが、要は、ソーラーパネルを作るにも、不安のない電力供給源が必要ということです。パネルを輸入せよというなら話は別ですが、それは国内メーカーへの圧迫で、産業振興になりません。

もう一つの思いつきは、雇用対策の言葉にあります。
ソーラーシステム200万戸分の設置に付帯して雇用が生まれるという考えでしょうが、現場は素人では役に立ちませんよ。雇用対策を言うなら、先ず技術訓練をしなければなりません。屋根もしくは屋上という、建物のもっとも重要な部分に関係する工事です。
そのことを考えただけでも、4年間200万戸のデタラメは、明らかだったのです。55万戸も不可能です。
 

思えば今年の神奈川県知事選は、辛いものでした。
自民党が黒岩さんを支持したとき、(私は自由民主党員で、当然神奈川県連に属しています)、力が抜けましたね。何故? という感じでした。
私は黒岩さんがキャスターになった頃から、(黒岩さんのせいではないです。その頃、ということです)、テレビの報道番組を見なくなりました。
私は選挙には行くものと思っていたので、結局、黒岩さんに入れました。後悔しています。棄権かもしくは無記名が正しい選択でした。

自民党は黒岩与党を止めるべきです。
いい加減なことを平気でいう人間を、支えてはなりません。一緒に腐る。

自民党はもっともっと真面目に苦労し、次期の知事候補を発掘し、準備すべきです。
県下の市長クラスに、逸材がいるのではないでしょうか。(そう思える人が、います)
言論人や学者には、あきました。

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[追記]2011.10.19 『転進』

[産業経済新聞 2011年10月16日(日)]
1都4県週刊知事 神奈川・黒岩祐治知事
撤回とは言っていない

「撤回と言っていない。新しい目標に突き進むという話。目標を下げた気持ちは全くない」
黒岩祐治知事は13日の定例会見で、太陽光パネル4年200万戸分の数値目標を取り下げた前週末の発言を、こう説明した。4年200万戸分とした選挙公約を、省エネや蓄電も含む構想に修正して1カ月。新たな目標の「県内消費電力量に対する再生可能エネルギーの割合を平成32年度に20%以上」との整合性を問われ続けた。この事態に終止符を打つため、前週末の議会後、記者団に「(200万戸は)夏の計画停電を起こしたくない思いのメッセージ。役割を終えた」と語った。事実上の撤回が波紋を呼び、11日の議会では「議会への説明と違う」など厳しい追及も。会見では「結果を見てほしい。4年後(選挙に)出るなら、それを判断してほしい」とも述べた。

Wikipedia「転進」
国民には敗北の事実は隠され、撤退は「転進」という名で報道された。そのため、撤退した将兵も多くはそのまま南方地域の激戦地にとどめ置かれた。この悲惨な状況について国民が知り得たのは大本営発表の次の一文のみであった。
「ソロモン群島のガダルカナル島に作戦中の部隊は昨年8月以降、激戦敢闘克く敵戦力を撃摧しつつありが、その目的を達成せるにより、2月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり」
戦後、軍事評論家の伊藤正徳は「ガダルカナルは、たんなる島の名でない。それは帝国陸軍の墓地の名である。」と批評している。 

 

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