117. 本当に春が来たのか?   2012年5月13日)

   4月29日、「昭和の日」はまさに日本晴れの良い日になった。国民の祝日である。早朝から暖かいというより暑いと感じる朝であった。日差しがとても強い。空はすっきりと青く、辺り一面は新緑に燃えている。小鳥たちの囀り声も、楽しそうで喜びに満ちた明るい声が聞こえる。
   ところが、5月に入っても朝夕は肌寒い日が続いている。庭や周辺の山々の木々や花は季節の変化をきちんとわきまえて、冬支度から春へと衣替えをしている。片や人間はどうかというと、「なんだか寒い」という感じが抜けきれず、服装を選ぶのにも苦労している。
   果たして「春が来た」のかな? 春の一部がどこかで道草を食っているので、天空の寒気を追い出す力がたりないのかな? そういえば、庭に咲くチューリップの花を観察していたら、膨らんでいたつぼみが、日差しをうけてぱっと花を開いた。雄方になり花びらはそっとつぼみ、その翌日は肌寒い一日となったせいか、花弁は開かずしまいであった。「やっぱりお前も寒かったのか?」とおもわず声をかけてしまった。季節の変わり目がすっきりしない。

   5月6日、長い連休明けのこの日、なんと午後に、茨城県つくば市や栃木県真岡市で本格的な竜巻突風による大きな被害が出た。この竜巻は大昔はともかくとして、近現代の気象観測史上はじめて大規模な本格的な竜巻が日本で発生したことを示している。今年はどうも異常な気象条件がかさなっており、気になっていたのだ。なにしろいつまでたっても日本上空に寒気団が流れ込んでくるので、南からの暖気流とがまじりあって大規模な竜巻や突風を起こすようになったという。これまで日本でも規模の小さな竜巻はあったが、その規模をアメリカの竜巻の規模と比較するために、滝に例えてその大きさで比較すると、ナイアガラの滝と華厳の滝ほどの規模の違いかもしれない。しかし本格的な竜巻であったことには違いない。少年一人が犠牲になり、53人がけがをされたという。被害に遭われた方々に心からご同情もうしあげます。一日も早く生活が元通りに回復することを祈念します。

   5月6日はもう一つの大きなできごとがあった。それは北海道岩間町柏原発3号機が定期点検のために5日午後11時すぎに運転停止した。その結果日本にある商業用原発50基すべてが完全に停止したのだ。いまは原子力発電所は1キロワットの電気も発電していない。これを「祝いの日」として歓喜している人もいれば、電力の需給関係に不安があり、日本の経済力の低下を恐れる産業人もいる。巨大地震の起こる可能性が以前より高いという情報がある一方で、自然エネルギーだけにたよるのでは、発電量が需要に間に合わず、これから太陽光や風力発電施設などを増設するには、なお時間がかかり、電力不足を心配する向きもある。どうすればよいのかわからない。素人の私が考えるのは、マスコミが率先して、テレビの24時間放映を短縮して節電に協力する勇気をもてば、社会全体もそれにつられて消灯時間が早くなり、節電効果が代であろう。

   昨年11月に、日本カトリック司教団までもが「いますぐ原発の廃止を」というメッセージを発して原発を止めるように声を挙げた。しかし、バチカン総本山はそんなことは言っていない。司教団は原発というのを原爆と勘違いしているのではないかと気にかかる。原子力発電も原子爆弾もともの物理の原理から割り出したエネルギーであり、それを平和目的に利用するか、殺人目的の爆弾として利用するかの違いである。そのエネルギーは万物の造り主である神から頂いたお恵みのエネルギーであることを忘れてはならない。もっとも、日本は地震大国だから、原発の施設が地震や津波の影響で破壊されないように防災対策をより一層厳重に構築しなければならないことは当然である。その上で、日本の国民が必要としている電力需要の増大にどのような対応するのか、そこが知恵の出しどころだと思う。

   日本の海底には豊富な天然資源がねむっているということが最近の新聞報道などで明らかになってきた。日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構が沖縄本島沖の海底に人口の熱水噴出口を作り、周囲にできた鉱物だまりからレアメタル(気象金属)を含む鉱物を回収することに成功したのだそうだ。(2012年5月12日産経新聞「海の底に目覚めのときが」大野正和地方部次長)また、日本が世界の第四位の海洋大国である立場を生かして、今、海水中に溶け込んでいる元素(海水溶存物質)を調べると、ナトリウムイオンやマグネシウムイオンなどのアルカリ土類が上位を占め、そこから有用金属であるパナジウム・ウラン・モリブデン・リチュウム・ホウ素・ストロンチウムなどの希少金属資源の存在があきらかになったという。黒潮にのって原発500年分のウランが毎年やってくるという。日本近海に流れてくる黒潮は、1年間で約520万トンのウランを運んでくるそうだ。その0.2パーセントを捕集すれば、日本の原子力発電に必要なウラン1年分を賄うことができるという(「日本は世界の4位の海洋大国」山田吉彦・東海大学教授・講談社α新書・56〜60頁)。電力発電資源が安定的に日本で自給できるのであれば、この原発技術をさらに高度に発展させて、安全・安心・無公害の発電技術を高めることが、日本国の将来の発展につながることは間違いない。日本カトリック司教団はそこまで思いが至らなかったのではないかと思う。