「日本カトリック正義と平和協議会」の異様

2002.12.10ノムラカツヨシ

今回の「小泉訪朝」、そこで明らかにされた北朝鮮の非道な「拉致」に関して、カトリックの聖職者が出した公式の声明は二つしかない。2002年10月17日に浦和教区信徒に向けられた浦和教区長 谷大二司教のものと、日本カトリック正義と平和協議会 松浦悟郎司教のものである。これを中心に検討してみたい。左が資料、右がノムラの検討文である。

在日朝鮮人へのいやがらせ、差別事件に関する呼びかけ文

日本カトリック正義と平和協議会
担当司教  松 浦 悟 郎

最近、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)による日本人拉致事件の報道と共に、日本に住む在日朝鮮人、特に子どもたちに対する陰湿ないやがらせや差別事件が起こってきています。朝鮮学校に通う子ども達が登下校の際、心ない日本人から暴言を浴びせられ、暴行を受けるなどのことが全国各地で起こり、その結果、先生付き添いによる電車での集団下校、チマ・チョゴリ着用自粛など不本意な状況を余儀なくされています。今この日本は、子ども達が白昼でも襲われるのではないかと恐れ、民族の誇りであるチマ・チョゴリを着ると危険であるなどの異常な状況なのです。今までも何かの事件が起こり、共和国が関与しているとの報道がなされる度に、同じようなことが繰り返されてきました。このことは、一部の心ない日本人の問題だけではなく、それを傍観することによって、この暴挙を許し続けてきた私たちの責任でもあるのではないでしょうか。なぜなら、多くの被害者が、いやがらせや暴力を公然とふるわれても、それを止めようとする日本人はほとんどおらず、見てみぬふりをしていたと証言しています。もし、その現場に居合わせた人びとがそれを許さず、みんなで差別と闘う行動が自然に起こるような社会なら、被害を受けた在日朝鮮人の子どもたちも、「多くの仲間がいるからこの国で生きていける」と希望を持つことができるのではないでしょうか。そしてこのことは、さまざまな差別を受けている日本人にも、立場の弱い他の外国人にも同じことが言えます。
 振り返れば私たちの国は過去において、朝鮮半島を36年間植民地支配しただけでなく、その政策の中で彼らの言葉も名前も文化も奪い、強制連行(拉致)、強制労働、そして戦時性的奴隷制度という恥ずべき過ちをも犯しました。このことに対して少しでも償うことがあるとするなら、植民地支配の結果として日本に住んでいる多くの在日韓国・朝鮮人の民族性と尊厳を守り、心から喜んで共に生きられる社会にすることではないでしょうか。
皆さん、今回のような差別を許さず、「共に生きられる社会」を実現するために、以下のようなことを参考に、個人として、あるいは学校、教会などの単位でもできることを何か具体的に始めてみませんか。 

1. もし、差別やいやがらせの現場に直面したら、勇気を持ってそれを許さないという意思表示をするなど何らかの行動を取る。
2. 行動できる人になるためにも、分かち合う場、学ぶ場を家庭や教会で持つ。特に勇気がなかったことも含めて自分の差別、被差別体験を分かち合うことは、意識を深め、意志を強める一歩となる。
3. 今回のさまざまな事件について、自分の地域にある朝鮮学校に連帯と激励の手紙を書く。できるなら、朝鮮学校の子どもたちとの交流を図る。
4. 自分が関係する学校や教育委員会などに、教育の中でこのような問題克服のためのプログラムを実施するように要請する。

2002年11月11日

これが、「日本カトリック正義と平和協議会」(以下、本文では「正平協」という)の、日本人の拉致を金正日が認めた後に出された、最初かつ唯一の公式声明文である。ここには拉致された我が同胞への言及も同情もなく、まして北朝鮮への一言の抗議もない。つまり今(2002.12.07)に至るも、「正平協」は拉致加害者並びに被害者について、そのものへの一切の言及をしていない。これが「正義と平和」を謳い、社会系問題を担当するとされる組織の正常な在り様だろうか。かつても今も、おびただしい政治的な発言を行ってきた組織であることを考えるとき、ほとんど「異様な」印象を受ける。北朝鮮がらみのニュース、拉致も核兵器も麻薬も、正平協は一切触れていない。

人も組織も、その発言によって本性を表すと同じく、その語らないことによっても本性をあらわす。自らの政治的発言を『預言者』に擬した数人の高位聖職者も、黙して語らない。預言者にも得意な部門とそうでない部門があるらしい。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)、というのも気になる表現である。普通は略称に「北朝鮮」を使う。「共和国」というのはあの国の人々が自国を表す為に使う独特の臭みある言葉なのであるが、他国人が使うのは可笑しいのである。なぜなら、「共和国」というのは固有名詞でないからだ。このような言葉の用法自体に、何ゆえか北朝鮮へのおもねりがある。不思議な体質である。

因みに、
「★ 日本カトリック正義と平和協議会の声明文、公表文書」
は以下のものである。(正平協HPによる)。このタイトルを見ただけで、教会の門を叩こうと思ったものも躊躇するであろう。代りに社民党や共産党のシンパが、こっちも面白そうだと、興味を持つかも知れない。聖職者からして、既にそうであった可能性が強い。

2002年
★「爆弾はいらない 子ども達に明日を」各国首脳にメールで声をとどけよう。 02.11
★Caroling for Peace.12月13日
★原子力安全規制問題国会プロジェクト アイリーン・スミス(グリーン・アクション)さんからの緊急呼びかけ 02.11.12
* 02.11.11 在日朝鮮人へのいやがらせ、差別事件に関する呼びかけ文
*02.05.20. 東ティモール独立のお祝い
*2002.04.26 総理大臣の再度の靖国神社参拝に対する抗議と要請
*2002.4.22「雨の朝、首相の靖国参拝をめぐって」  事務局長 木邨健三
*2002.03.14  日本のエネルギー政策と京都議定書の締結、およびそれに基づく法律と政策に関する キリスト者の提言
*第24回総会日本国総理大臣、及びアメリカ合衆国大統領の明治神宮参拝中止の申し入れ 02.02.15

2001年
*2001.12.04 韓国訪問にあたっての日本キリスト教界代表の共同声明 日本語・英語
*2001.08.13 小泉首相の靖国参拝に対する遺憾表明
*2001.08.10キリスト教各教派 小泉首相の靖国神社参拝について要望  日本語/英語
*2001.08.06フジモリ問題でペルーから要請
*2001.08.05 平和祈願ミサ説教 岡田武夫大司教
*2001.07  カトリック新聞 つくる会の教科書にNO! 『意見広告』/賛同者の募集文書(06.30)
*2001.07.07 米兵による性暴力事件に対する抗議と、地位協定と米軍基地の抜本的見直しの要請(日本語 /英語)
*2001.06.30 大塚喜直司教の正平協へのメッセージ
*2001.06.30 カトリック新聞『意見広告』賛同者の募集文書
*2001.06.30  東ティモールへの自衛隊派遣反対意見書 (日本語 /  英語)
*2001.06.29 総理大臣の靖国神社参拝に対する反対表明
*2001.06.23「アフリカのエイズと債務問題」要望書
*2001.05.31カトリックの中学校に 「新しい歴史教科書をつくる 会」の教科書の不採択のお願い
*2001.5.22 ハンセン病謝罪・国賠訴訟における控訴断念の要望
*2001.05.07  教科書検定合格に関する憂慮表明(司教有志12名による)(日本語  /  english)
*2001.03.27  教科書検定に関する要請書
*2001.02.20 カトリック学校の日の丸・君が代・元号についてのお願い
*2001.02.15 えひめ丸/原潜事故に関する抗議 日本語/english

2000年
*2000.10.14 金大中・韓国大統領のノーベル平和賞受賞に際して
*2000.07.19 JUBILEE2000沖縄国際会議の合意文書(日本語) (english)
*2000.05.17 森総理の「神の国」発言に抗議
★00.04  2000年「平和メッセージ」
*2000.04.10 石原慎太郎・東京都知事の民族差別発言に抗議し辞職を求める共同声明   <その後の動き>
* 2000.04.12 盗聴法(組織的犯罪対策法)の廃止を求める市民団体共同声明

1999年
* 1999.02.24「新日米防衛協力の指針(ガイドライン)」に反対する声明
*1999.05.26「新ガイドライン」関連法案採決に対する遺憾表明
*1999.03.12「日の丸・君が代」の国旗・国歌法制化 反対
*1999年 東ティモール問題に関する声明文
* 1995.04 新しい出発のために(日本語) (english)

「在日の人々へのいやがらせ」の報道

「RAIK通信第75号」(在日韓国人問題研究所発行)より

9月17日夕方

* 大阪市の朝鮮初級学校に「生徒を殺すぞ」という脅しの電話。府内の他の朝鮮学校にも、同様の嫌がらせ電話(『東京』9.18)。

* 新潟小中級学校に「数カ月以内に子どもたちに害を及ぼす」といった脅迫電話が相次ぐ。学校は18日を臨時休校にし、19日以降はチマ.チョゴリを当面着用しないことを決定(『新潟』9.18)。

* 神奈川初中級学校に、「朝鮮に帰れ」「拉致問題をどうしてくれる」といった約30本の脅迫電話(『毎日』9月18,19日)。

* 愛知中高級学校の女子生徒が帰宅中、一宮市駅で見知らぬ男にスカートの裾を引っ張られ、「朝鮮人か」と罵声を浴びせられる。別の女子制4名も、名古屋市内の駅で暴言を吐かれる。いずれもチマ.チョゴリ姿だった(『毎日』9.18)。

* 東北初中高級学校のホームページの掲示板に、「朝鮮人帰れ」「拉致するぞ」といった書き込みが相次ぎ、3頁にわたって「死ね」と速記したものもある(『河北』9.18)

* 埼玉初中級学校は集団下校を実施。さいたま市内の焼肉屋に「店をつぶしてやる」と脅迫電話(『毎日』9.19)。

* 奈良県警に男の声で「朝鮮会館を爆破する」と110番電話。県警から総連県本部に連絡し、警察官2人が立ち会って調査(『毎日』9.19)。

9月18日

* 朝、大阪初中級学校の中一の女生徒が登校中、中年女性に無言で背中を突き飛ばされる。大阪市内の別の学校では、チマチョゴリで自転車登校していた中三の女生徒が、男性から石を投げられる(『朝日』9.18)。

* 東京中高級学校に午前6時半ごろ、若い男の声で「おまえらぶっ殺してやる」と電話(『産経』9.18)。

* 朝、神奈川初中高級学校の女生徒が登校中のバスの中で、男性に「この朝鮮の学生が」となじられ足をけられる。同校には「朝鮮人は国に帰れ」「危害を加えてやるぞ」など脅迫電話が約30件(『神奈川』9.19)。

* 朝、総連愛知県本部に「学校はどこにある、カッターで切りつけてやる」といった電話が16件、メールが40本(『毎日』9.18)。

* 朝、東北初中高級学校に「殺すぞ」という電話があったため、同校は当面、集団登下校するよう指導(『河北』9.18)。

* 川崎初中級学校では、警察署員が警備にあたる。横須賀朝鮮幼稚園は臨時休園に(『毎日』9.19)。

* 夜、WBCスーパーフライ級王者で在日三世の徳山昌守(洪昌守)選手の公式ホームページにある「応援掲示板」が閉鎖される。「北へ帰れ」など誹謗中傷する内容の書き込みが相次いだため。所属する金沢ジムにも嫌がらせ電話が相次いだ(『読売』9・19ほか)。

* 総連神奈川県本部に、「朝鮮学園を爆破するぞ」と脅迫電話(『神奈川』9・19)。

* 神戸高級学校では、「北朝鮮に帰れ」などと言って一方的に電話を切られる被害が数件(『毎日』9・19)

* 広島初中高級学校では、ホームページの掲示板に「朝鮮へ帰れ」「お前らは鬼畜だ」といった書き込みが12件、金正日総書記の名で「拉致した」と画面いっぱいにつづった悪質なメールも送られる(『中国』9・19)。

* 松本の長野初中級学校では、前日から嫌がらせ電話が相次いだため、登校時に子どもに父母らが同行(『信濃毎日』9・18)。

* 朝、JR八幡宿駅前で千葉初中級学校の中三女生徒に、男が「拉致!拉致!」と暴言(在日本朝鮮人人権協会の作成資料)。

* 朝、北大阪初中級学校の中一女生徒がJR大阪駅から阪急梅田に向かう途中、中年男性が学生カバンの朝鮮名を見て背後から肩を押す(人権協会資料)。

* 朝、大阪高級学校の第二制服を着た女生徒が大阪駅から阪急梅田に向かう途中、50代男性から背中を押される(人権協会資料)。

* 朝、チョゴリを着て登校中の東大阪中級学校三年の女生徒に、中年男性が石を投げる(人権協会資料)。

* 朝、登校中の千葉初中級学校の中三女生徒3人に、中年男性が「この道歩くな」と脅迫(人権協会資料)。

* 朝、登校中、自転車に乗り信号待ちをしていた埼玉初中級学校の小四女子児童に、中年男性が「お前、朝鮮人だろう、悪いことしてやる!」と暴言(人権協会資料)。

* 夕方、近鉄八戸ノ里駅付近で、大阪高級学校一年の女生徒が第二制服を着て自転車に乗り下校中、60代男性が近寄り「死ね!」と言ってその場を去る(人権協会資料)。

* JR垂水駅構内でトイレ前に立つ神戸高級学校の女生徒に、男子高校生数名が近づき「拉致してやろか」と脅迫(人権協会資料)。

9月19日−−

* 朝、大阪市生野区の路上で、大阪中級学校二年の女生徒が登校中、高校生風の男5人から暴言を吐かれ、たばこの箱を投げつけられる(『毎日』9・20)。

* 京都中高級学校を含む3校へ「生徒を殺すぞ」などの脅迫や無言電話があったほか、19日夜には帰宅途中の中二女子生徒が、駅構内で3人の女子高校生から「出ていけ」などと暴言を吐かれる(『京都』10・2)。

* 朝、下関初中級学校の正門前にネコの死体放置(人権協会資料)。

* 朝、南海線北助松駅のホームで、東大阪中級学校の男子生徒2名に中年男性が近づき、肩を引っ張り電車に乗るのを妨害(人権協会資料)。

* 朝、通学時の東大阪中級学校三年の女生徒に、男子高校生5名が「おまえ朝鮮人やろ!帰れ!」と暴言(人権協会資料)。

* 朝、登校途中の城北初級学校五年の女子児童に、自転車に乗った中年男性が「拉致するぞ!」と脅迫(人権協会資料)。

* 午後、岡山初中級学校の中三女生徒が自転車で下校中、男がぶつかってくる(人権協会資料)。

* 夜8時、東大阪中級学校二年の女生徒が下校途中の公園で、高校生3人に「おまえ、朝鮮人やろ」と問われ「うん」と答えたら、ふくらはぎをけられる(人権協会資料)。

9月20日以後−−

* 20日朝、東大阪中級学校一年の女生徒が自転車で登校中、若い男に体当たりされる(人権協会資料)。

* 21日朝、東大阪中級学校の女生徒3人が中体連秋季大会が行われる競技場へ自転車で向かう途中、中年男性から「朝鮮人、かえれ!」と暴言(人権協会資料)。

* 22日午後、長野初中級学校の小四児童が松本市内で自転車に乗り出かけようとした時、中年男性からすれ違い際に石を投げられる(人権協会資料)。

* 24日夕方、生野区の焼肉屋付近で、東大阪中級学校の男子生徒に、高校生ら2人が「朝鮮人、かえれ!」と暴言を吐きながら2回にわたり石を投げて逃げる(人権協会資料)。

* 26日、大阪高級学校の姉妹が帰宅中、男子高校生らに囲まれ、「死ね」と脅迫される(『読売』9・28)。

* 26日夕方、男3人が岡山初中級学校の寄宿舎内に立ち入り、「拉致問題をどう思っているんだ」と迫る(人権協会資料)。

* 26日夕方、大阪高級学校二年の女生徒2人が学校指定の体育着を着て自転車で下校中、高校生10人が道を塞ぎ、5分ほど問答したあとその場を去る(人権協会資料)。

* 27日朝、大阪高級学校一年の女生徒2人が第二制服と学校体操着を着て登校中、電車内で60代男性が「お前ら、そんな服をきてもわかるんじゃい!」と脅迫(人権協会資料)。

* 「チマ・チョゴリの制服を私服に変えても当方は見逃さぬ」という脅迫文が届いた埼玉朝鮮初中級学校と埼玉朝鮮幼稚園が27日夕、緊急記者会見を行う。登下校時に女生徒が複数の男から「朝鮮人だろう。悪いことをしてやろう」と暴言を浴びせられるなどの被害が2件、ホームページにも「こらしめてやる」「リンチをしてやる」などの書き込みが相次いでいるという(『毎日』9・28)。

* 総連教育局のまとめでは、全国の朝鮮学校や生徒に対する脅迫、悪質な嫌がらせが計291件、そのうち生徒がけがをした暴行事件が2件、石をぶつけようとするなど暴行「未遂」が9件、暴言が12件、脅迫や無言電話が計160件。電話やメールは極めて悪質な内容の場合だけ報告されているため、実際ははるかに上回る数になるという(『産経』)。

左が松浦悟郎司教声明の根拠となった「在日朝鮮人へのいやがらせ、差別事件」の事例であり、正平協のHPに掲載されている。

1.これは正平協が自ら把握したものでなく、「RAIK通信第75号」(在日韓国人問題研究所発行)なるものの転載である。転載故に自らの直接の責は逃れ、かつ意志は伝える、という巧妙な方法である。

2.「RAIK通信第75号」なるものの記事がまた、自らの事実調査によるものでなく、他紙報道の引用である。

3.事例の場所、日時があやふやである。

4.被害者の具体名が無い。

5.もとより加害者の具体名も無い。

6.当局が動いた形跡も無い。

7.場所・日時があやふやで、特定の当事者も登場せず捜査当局も動いた形跡がないとすれば、本来それは、まともなメディアなら「ニュース」にしないほどのものである。

8.よしんばこれらのことがすべて事実であったとしても、日本人同士の中でも日常茶飯、発生している類のものである。同様の「いやがらせ」は巷にあふれている。正平協を含めた「キリスト教団体」が、我々から見ればその加害者である事例も多くある。

9.一般にまともな組織(及び役職者)は、具体性の不十分なものを報じた、その集計を更に孫引きした、そのような資料を根拠に、「公式の」発言はしない。ただの一つでもいい、自分で「事実」を確認・掌握するものである。

10.「正平協」も関与するグループが、新しい歴史教科書採択にあたって行った、教育委員・出版関係者に対する電話・FAX・文書による波状的組織的ないやがらせは、如何なる根拠によって正当化されるのか。

11.よくもまあこれだけ集めたものだ。しかし拉致被害者や家族、相次ぐ「脱北者」等には一切関心を示さない。やはり異様な体質というしかない。

浦和教区の皆様

日朝国交正常化と真の和解と平和を求めるメッセージ

 9月の日朝首脳会談により、日朝国交正常化への一歩が踏み出されました。これにより、新しい日朝関係が始まり、朝鮮半島ならびに北東アジアの全域の平和と安定が促進されることを私は期待しています。
 朝鮮民主主義人民共和国政府は、「拉致」に政府に関係する機関が携わっていたことを認めました。国家が何の罪もない個人の命、家族のいとなみを侵害することは許されることではありません。国家による重大な犯罪です。
このようなかたちで個人の生が踏みにじられたこと、また、家族の苦しみを思い、いたたまれない気持ちです。被害者と家族の方々のために神に祈りたいと思います。また、帰国された「拉致」被害者たちが家族の絆を取り戻し、すべての人が人間らしく生きていけるような環境が作られていくことを希望します。
 同時に、私は、今回の「拉致」問題に関して次のことを感じています。
・共和国政府が独裁軍事政権であり、今の私たちには信じられない国であるかのように報道されています。確かに、そのとおりでしょう。しかし、戦前の日本も、今の共和国政府と同じだったのではないでしょうか。そのことを棚に上げて批判することができるでしょうか?私たち自身も過去を反省した上での批判でなければ、実りはもたらされないでしょう。
・戦前・戦中期、日本が朝鮮半島を植民地支配し、多くの朝鮮人を「強制連行」して戦争や労働に狩り出し、中には強制的に「性的奴隷」とされた女性がいたことを思い起こします。かつて、日本も「拉致」と同じ事件、いやそれ以上の事件を起こしていたのです。しかし、いまだに日本政府は彼らに十分な謝罪と補償を行っていません。
・「拉致」問題が取り上げられたあと、在日朝鮮人、特に弱い立場にいる子どもたちに対する嫌がらせ、脅迫が相ついでいます。根深い差別感情によって、このような心無い行為が繰り返されることについて、深く憂慮しています。
私たちの受けた悲しみや苦しみが、かつて私たちが与えた悲しみや苦しみとつながってこそ、真の和解と平和への道が開かれるのではないでしょうか。

2002年10月17日
カトリック浦和教区長
司教 マルセリーノ 谷 大二 

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朝鮮新報2002.09.25「春・夏・秋・冬」

脅迫電話、無言電話に脅迫メール、暴言の数々…。今回公表された日本人拉致問題と関連して、朝鮮学校の児童、生徒や総聯各機関への嫌がらせが相次いでいる。インターネットのホームページ掲示板が荒らされ、しばらく閉鎖を余儀なくされたところもある 
▼そんななか、ピースボートのメンバーは、東京や大阪の街頭でビラを配り在日コリアンへの嫌がらせをやめるよう訴えた。拉致家族の人々のなかからも、「怒りを感じる。日本人として許せない」と憤りの声が上がっているという。心中いかばかりかと、察するにあまりあるのに…

▼朝・日首脳会談で、拉致事件の真相が明らかにされたことに、率直に言って筆者はたいへんなショックを受けた。数日間眠れず、何を信じたらいいのかとがく然とした。多くの読者も同じ思いのようだ。涙と怒りの電話、ファクス、メールが今も編集部に届けられてくる。「ありえない」と信じていただけに、衝撃の大きさは計り知れない。祖国の発表を信頼して報道してきたとはいえ、「拉致はねつ造」と書いてきた記者としての責任を痛感している

▼金正日総書記は小泉首相に直接謝罪して責任者を処罰したことを明らかにし、再発防止を約束した。その約束通り真相解明は必ずされるきだ。絶対に禍根を残してはならない。今後、国交交渉の過程で日本の「過去の清算」も具体的に話し合われていくだろう

▼「憎しみの連鎖」からは何も生まれない。朝・日間の「真の和解」を実現するための交渉になっていくことを望む。それが未来につながるはずだ。(聖) 

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朝鮮新報2002.09.27「春・夏・秋・冬」

 今号の本欄は本来のコラムとしてではなく、編集部からの「便り」「お知らせ」の欄として読者のみなさんに届けたいと思います 
▼17日、平壌で行われた朝・日首脳会談の席上、金正日総書記は小泉首相に対し、拉致問題について特別委員会を作って調査した結果、事実であったことを認めました。そして、「遺憾なことであり、率直におわびしたい」と述べ、事件に関連した人々は「処罰」したとも語りました

▼拉致問題については、本紙紙上でも労働新聞、朝鮮中央通信などの「事実無根」「でっち上げ」などの見解に沿って、たびたび取り上げてきました。しかし、総書記が拉致事件を認めたことによって、本紙紙上で取り上げてきた報道、論調そのものが過ち、誤報であったことが明らかになりました

▼これまで読者のみなさんに誤った事実を伝え、そのことによって言葉では言い表せないご迷惑を与えたことについて、率直に反省しております。いくら祖国の報道を信じ、それに依拠してきたとはいえ、先入観に基づいて展開した編集部独自の検証記事などは、ジャーナリストにとってはあるまじき行為だったというほかはありません

▼拉致事件は、かつての朝・日間の不正常な関係のもとで起きたまことに遺憾なものであります。今後、こうした事件が2度と起きないよう、徹底した防止策が講じられるよう求めたいと思います。また、今回の事件から教訓を汲み取るとともに、朝・日国交正常化の1日も早い実現と親善・友好関係の樹立に向けて、編集部一同、全力を傾けていく決意でいます。 

浦和教区長谷大二司教の「拉致」に関連する発言と、朝鮮新報(朝鮮総連機関紙、即ち朝鮮労働党の日本における報道窓口)の発言を併載する。内容は不思議に同じであるが、それでもなお朝鮮新報の文章がマシである。朝鮮新報「春夏秋冬」には、(本心からか、とぼけかは別として)語る個人の息づかいが感ぜられる。

 

 

 

2002.12.02サンケイ
在日朝鮮人、救う会に激励電話続々

苦しい胸のうち「カンパして応援したい」
「日本人に申し訳ない」

 「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会、佐藤勝巳会長)に、在日朝鮮人とみられる人々から励ましの電話やカンパが相次いでいることが一日、明らかになった。「日本人に申し訳ない」「(北朝鮮に残る家族の)救出までがんばって」という声援のほか、自らも北朝鮮にいる家族のことを思い、苦しい胸のうちを明かして「今度こそ金正日政権を倒そう」と訴える人もいるという。
 救う会事務局(東京都文京区)には、九月十七日の小泉純一郎首相訪朝以来、連日電話が鳴り響き、無給のスタッフが対応に追われている。拉致被害者五人が帰国した十月十五日以降は、一日百件を超すように。内容は励まし、署名などの支援の申し込み、家族あての千羽鶴・手紙の転送などさまざまだが、最近は在日朝鮮人からとみられる電話が相次いでいるという。

 「やっぱり拉致していたかという思いだ。日本人に申し訳ない」「名は明かせないが、カンパして応援したい」。日本で生まれ育った二世、三世と思われる女性が多いが、年配の男性もいる。

 「私も妻と子三人が(北朝鮮の)強制収容所にいる。金品を請う電話が収容所の管理者からあるが、対応していない」「日本で懸命に働いて北朝鮮の家族に金、物を送っても届かない。でも送らないと命の安全が約束されない」

 電話を切る間際、「よく電話を下さいました」と伝えると、堰(せき)を切ったように泣き出す男性もいたという。

 日本政府に対し「今度こそ金体制を倒してくれなければ、北(朝鮮)に残しているわが同胞が生きていけない」と訴え、「コメ支援をしてくれるな」「経済支援はしないで」などと求める意見もある。

 救う会は「『支援すべきだ』と北朝鮮にくみするコメントをテレビで行う専門家やキャスターは、この悲痛な声に耳を傾けるべきだ。彼らは、飢えた家族がいてもなお『支援しないで』と訴えている」という。

 カンパの申し出も多い。申し出者のほとんどは昭和三十四年から五十九年までの帰還事業で北朝鮮に渡った在日朝鮮人や日本人妻の家族ら関係者という。

 「仲間と一緒に」とためらいがちに言われたときは「もう名前は尋ねなかった」(スタッフの女性)。口ごもりながらの申し出が約十件。帰化した人や名乗らない人は数知れないという。このほか、詳細な目撃情報を寄せ、警察庁の被害者認定の資料となったケースもある。

 これまで在日朝鮮人から同会に寄せられる電話は「拉致は事実無根で(北朝鮮への)冒涜(ぼうとく)だ」といった批判が多かった。「五人を早く帰せ」「約束を守れ」という電話もときおりあるが、被害者五人の帰国をきっかけに批判の声は確実に減っているという。

正平協よ、
記事を転載するなら、左のような報道にも目を向けよ。

北朝鮮の核兵器開発について語れ。

麻薬について語れ。贋札について語れ。ラングーンでのテロについて語れ。大韓航空機爆破について語れ。帰ることのない日本人妻について語れ。工作船について語れ。朝鮮人民への虐待、強制収容所について語れ。命を賭した脱北について語れ。

それとも社民党が、金正日が謝罪したあとも流し続けたように、それらをデッチ上げというのか。
(社民党の記念碑的論文はここ)

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今回の「拉致事件」、金正日の白状(それまではデッチ上げと云っていた)について、ある方向性を持つ人々の発言は、骨組みがほぼ一致している。

1.拉致は悪い。
2.しかしかつてもっと悪いことを日本は朝鮮に行った。強制連行。従軍慰安婦。創氏改名。日本語の強制。神社参拝。
3.今も在日朝鮮人に対して多くのイジメ、差別をしている。
4.まず日本人の方が反省しなければならない。

 

これらの件については現在、むしろ韓国側で見直しの気配がある。

1.日本統治下の朝鮮と李王朝下の朝鮮と、一般民衆にとってどちらが良かったのか。故・朴大統領が、貧乏百姓の息子だった自分は、李王朝のもとでは教育を受ける機会はなかったであろう(今の私はなかったであろう)、と語った実際を検証してみる必要がある。比較すべきはその当時の李王朝と日本統治であって、近代化された現在の韓国との比較ではない。

2.日本統治下の朝鮮と、この50年の金日成・金正日統治の朝鮮と、人民はどちらが良かったのか。本当に、真面目に、日本統治よりも金王朝を『解放』と思うのか。

3.もしも日本人が朝鮮人をそれほどにいじめ迫害したのなら、無条件降伏した在朝鮮日本人に対し、朝鮮人たちは何故、略奪暴行を加えなかったのか。韓国人(朝鮮人)のあの直裁な激しい性格からみて、彼らが日本人に対し怒りを制御して寛容だったとは思えない。「仕返し」する根拠がなかったのだ、と呉善花氏は記している

4.もしも日本人が朝鮮人をそれほどにいじめ迫害したのなら、戦後も何故数十万人の人々が祖国へ帰らず、今もなお日本にいるのか。(1945年時点で240万人の朝鮮人が在日していたという資料がある。この前後の推移を、確かな資料で点検してみたいと思う。どれ位の割合の人々が日本へ残ったのか。そして残った理由は何なのか。)

それらのことが最近、他ならぬ韓国人によって再検証されている。呉善花(オ・ソンファ)氏、金完燮(キム・ワンソプ)氏などである。そしてこのことに一番困っているのが“反日・日本人”である。李王朝の下で朝鮮の近代化を求め、明治維新を手本とする人々がいた。この辺りの歴史は、私自身老後の楽しみとしたいほど、錯綜して面白い。一方的な日本の力による併合ではないのである。一方的に日本が併合したと考えることが、むしろ韓国に対し失礼であると思う。
以上、「拉致」に対する正平協の異様さに憤って長文を書いた。カトリック新聞も明らかにその影響下にある。
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(追記)
日本カトリック正義と平和協議会 松浦悟郎司教
同事務局長 木邨健三氏
等の動静が『革共同(中核派)』の機関紙週間「前進」に載っている。中核派は「左翼」という以上の“過激派”である。カトリックと、暴力革命を堂々とうたう唯物共産主義過激派の、どこに接点があるのか。不可解であるが、どこかに接点があるのだろう。それを知れば、彼らが牛耳る正平協、カトリック新聞の論調もなるほどと思う。→資料


彼らは加害者の横にいたのではないか

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朝岡昌史氏「ニセ平和主義者の仮面を剥がせ」

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