2014年2月12日
NHK籾井新会長発言に対する「毎日」の社説(三)

 

31日に衆議院予算委員会へ籾井氏が参考人として呼ばれました。その直後の毎日新聞の社説を検討してみます。

社説:NHKと政治 萎縮せず果敢な放送を
[毎日新聞社 2014年2月1日(土)]

NHKの籾井勝人(もみいかつと)会長の就任記者会見以来、公共放送と政治の距離が深刻な問題になっている。

どう深刻な問題になっているんですかね。問題にしているのはあなた方だけでしょう? どのように答えようと、“政治的”と批判することのできる質問を、あなた方はした。「ノーコメント」で済ませば満足したんですか? 今後もそうなんですか? あなた方は新聞紙上で言いたいことを言える。しかし籾井さんはNHKでそれが出来ない。それを見越して攻撃しているのです。

1月31日には衆院予算委員会に籾井会長が参考人として出席し、会見での発言をただされた。籾井氏は「私的なコメント」「(放送に)個人的な意見を反映させることはない」との答弁を繰り返した。

ごく当たり前の答弁でしょう。

放送法第1条に明記されている通り、NHKは「健全な民主主義の発達に資する」放送をめざし続けなければならない。籾井氏の態度は、それにふさわしいものだろうか。
籾井氏は就任会見で従軍慰安婦問題や特定秘密保護法、安倍晋三首相の靖国参拝問題などについて、その資質を疑わせる発言を繰り返した。

どう答えたら「健全な民主主義の発達に資する」回答であり、「その資質を疑わせ」ない発言なのか、模範回答を書いてみなさいよ。
あなた方が質問し、その答えを批判しているのだから、当然、あなた方が合格点を付ける回答がある訳でしょう? それが無く批判しているのなら、「難癖」です。
是非模範回答を発表して欲しい。おそらくその回答は、私が採点すれば、「健全な民主主義の発達に資する」ものでなく、「その資質を疑わせる」ものであると予測します。

これに対して、内外から多くの批判が寄せられた。NHKの報道や番組制作が萎縮し、政権寄りの放送に偏ってしまわないかという心配もあった。会長の任免権を持つNHK経営委員会は「公共放送トップの立場を軽んじた」ことを厳重注意し、籾井氏は反省を語った。

籾井氏が反省したのは発言の「内容」に対してではないでしょう? あなた方の質問に答えたことを反省したのです。言葉が分かりますか?

しかし、それが問題の本質だろうか。放送法の第4条には、意見が対立する問題についてはできるだけ多角的に論点を明らかにすべきことが記されている。

大賛成です。籾井氏の問題でなく、これ迄に、それが不十分であったことが問題なのです。

NHK会長が「個人的見解」であれ、さまざまな議論がある問題に、固定した先入観しか持てていないことが問題なのだ。

あなた方は何を質問したのですか?
「個人的見解」以外の見解が有ると思ったのですか?
有ると思ったのなら、その見解の主体は何ですか?
そんなものはあり得ないじゃないですか?
そして、ある一人の見解を「固定した先入観しか持てていない」と決めつける根拠は何ですか? それこそ正に「固定した先入観」ではないですか?
更に言うなら、「固定した先入観」を排除した“意見”というものが存在するのですか?

30日には原発問題を取り上げようとした東洋大の教授が、NHKのラジオ番組への出演を取りやめるという問題がわかった。東京都知事選を理由にテーマ変更を求められたためだ。この教授は20年以上前からこの番組に出演し、30日は「原発再稼働のコストと事故リスク」がテーマの予定だった。NHKから「投票に影響を与える可能性があるのでやめてほしい」と言われ、「特定の人を応援しているわけではない」と反論したが、受け入れられなかった。

これはNHKの過剰反応だろう。

NHKは、極めて妥当な判断をしたと思いますね。

もちろん、「放送の不偏不党」は放送法に明記されている。特定の候補や政党を応援してはならない。しかしそれは、重要問題について、選挙期間中は放送してはならないということとは全く違う。
時間がなくて原発賛成派の人に同時に出演してもらうことができなかったと、NHKは説明するが、NHK側が反対の考え方を詳しく紹介するなど、番組内でバランスをとる工夫はいろいろとできる。こんなことを続けていたら、重要な問題を放送できなくなりはしないだろうか。

そんなややこしいことをしなくても、選挙の終わる、ものの一週間、待てば良いだけのことでしょう? それを待てない理由があるとすれば、その理由こそが出演停止の理由でしょう。毎日は、この出演者が逆の意見の持ち主だったとして、同じことを言うのですか? 信じられませんね。

不偏不党とは、社会が抱える問題から目をそむけることではないはずだ。逆にそういう問題に萎縮することなく、果敢に切り込んでこそ、民主主義の発展に貢献できるはずだ。

NHK新会長籾井氏に、それを期待します。



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