2014年6月20日
教皇フランシスコの訪日問題(三)
何故教皇は日本司教団の訪日要請を無視したか


2013年10月4日付 「訪日要請文」に次の文章があります。

日本の教会はあらためて、人間の原子力利用の非倫理性、非福音的、非人間性を学びつつ、また原発事故により引き起こされる世界的な環境汚染への責任も痛感しています。2011年に日本司教団は即時原発廃止を訴えました。

カトリック新聞2012年11月25日号に次の記事があります。2012年11月9日、教皇庁・正義と平和評議会議長のピーター・コドヴォ・アピア・タークソン枢機卿と、「今すぐ原発の廃止を!」主張する日本の正平協・谷会長(当時)の話し合いがありました。

「(谷司教が)日本の司教団が昨年脱原発メッセージを出したことに関連し、原発に対する教皇庁の見解を再確認したところ、(タークソン枢機卿は)技術開発が進んでいることもあり、核廃棄物処理といった問題が解決するのを待つという面があることも説明した。他方、日本で政府に対し原発の安全や代替エネルギー研究などを要請することは重要だとも語った。

つまり、「原発廃止」に同意していません。「技術開発が進んでいることもあり、核廃棄物処理といった問題が解決するのを待つという面がある」という、きわめて真っ当な見解です。しかし岡田大司教文書からすれば、それは、「非倫理性、非福音的、非人間性」な立場ということになります。

(谷司教は昨年7月、突然さいたま教区司教の座を去りました。実質解任されたと思いますが、その事情について、信徒への説明は一切ありません。この件も、司教団の持つ「病」の一つと思いますので、本稿連載中に別途触れたいと思います)。


IAEA(国際原子力機関)という組織があります。外務省の資料によれば、その目的は、

(1)IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする。

ヴァチカン市国(Holy See)は、その創立時からのメンバーでした。

そしてまた、「特別な貢献」をしてきたと記されています。
(部分抜粋)

The Holy See has participated in every General Conference of the IAEA and has made a special contribution in Vienna to international co-operation and the development of the peaceful atom.
On August 20, 1957 the Holy See became a full member of the Agency.

聖座はIAEAの全ての総会に参加し、ウィーンにおいて国際協力および原子力の平和的発展に対して特別な貢献をしてきた。
聖座は1957年8月20日にIAEAの加盟国となった。

The special Mass has been held in St. Stephan's Cathedral and conducted by His Eminence Franz Cardinal Konig. The Vienna Boys Choir have sung at the service.

特別ミサが聖シュテファン大聖堂にてFranz Konig枢機卿猊下の司式で行われた。ウィーン少年合唱団も唱和した。

Because of this unique contribution by the Holy See, those who have not had the opportunity to attend the annual Mass may be interested to read the principal portions of the message given by Cardinal Konig on Sunday, 28 September 1969, in the four official languages of the Agency, namely English, French, Russian and Spanish.

この聖座独特の貢献のおかげで、毎年行われるこのミサに与る機会がいままでなかった者は、Konig枢機卿が1969年9月28日、IAEAの公式言語である英語・仏語・露語・西語の4か国語で発したメッセージの主要点を読みたいという興味が湧くかもしれない。

You have demonstrated how the most powerful and ambivalent invention can be used for welfare and prosperity of mankind for the community of all nations. And so, the International Atomic Energy Agency has replaced mankind's fear of atomic energy as a destructive force with a great hope and realization that atomic energy may indeed be a force for peace. You are demonstrating how fear of war can be turned into hope for peace.

最も強力で両面価値のある発明がいかに人類の繁栄のために利用され得るかを皆様は示してこられました。IAEAは、破壊力としての原子力に対する人類の恐怖を、原子力が真に平和の力になり得るという大いなる希望と認識へと置き換えました。戦争の恐怖がいかに平和への希望へと変わるかを皆様は示しておられます。


今もなおヴァチカン(Holy See)はIAEAの構成員であり、その基本スタンスは、2012年11月9日のピーター・コドヴォ・アピア・タークソン枢機卿発言で明らかであると思います。技術開発に対する希望を失っていないのです。

その教皇庁・教皇に対する「即時原発廃止」運動への支持要請は、教皇庁に対して、政策の変更を求めているのです。教皇から返事のないのは当然でしょう。


追記ですが、岡田大司教の2013年10月4日付 「訪日要請文」が、実際は何語で、どのような書面で、教皇庁・教皇へ送られたのか分かりませんが、公表された和文を見る限り、砕け過ぎのように思います。

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