2013年10月2日
消費税率アップ
安倍首相が消費税率8%へのアップを決断しました。
消費税増税の善し悪しは、私にはよく分りません。
すべてに良い面と悪い面があるので、絶対的に良いと言える政策は無いと思います。
ただ、いつかは消費税増税をしなければならないのであれば、今回延期したら、そのチャンスはもう来ないと思います。
景気が良いときは、景気に冷や水を浴びせると、
良くなりつつある時は、腰折れさせると、
不況時は、破滅させると、
やれるときはありません。実際、やれませんでした。
そもそも一律全体に景気が良い(悪い)ことは無いのであって、“適切な時期”など無いのです。
結果がどう出るか私には分りませんが、(どっちかというと私は楽観的ですが)、常々消費税については大きな誤解があると思っています。
言いふらしている人は、分っていて言っているのです。しかし聞いた方はそう思いたがる。
それは「消費税の逆進性」という言葉です。
消費税率をいまゼロにすれば、誰が一番恩恵を得るか、誰が喜ぶか、簡単な想像力です。
税率を下げれば恩恵の多いものが、税率を上げれば負担が多いのです。
私は大きな出来事があった場合は次の日、各紙の社説をコピーして保管しますが、今日(10/2)の中日新聞社説にこんな一節がありました。
「すべての人に同等にのしかかるため、所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性がある。」
これは上に書いた通りです。「すべての人に同等にのしかかる」のではありません。ウソです。
「さらに法人税は赤字企業には課せられないが、消費税はすべての商取引にかかり、もうかっていなくても必ず発生する。」
だから公平であると言えるのです。
企業の最終損益に関係なく課税される故に「安定財源」である訳です。この社説の論は“消費税”そのものの否定ですが、消費税を無くして喜ぶのは“富有者”です。
最終利益を対象とする課税は、会計上の利益を減らそうとするインセンティヴを生みます。我が社は「節税」の範囲で誠実に知恵を絞りますが、一線を超えると「脱税」でしょう。消費税はそこから外れた税です。
国家予算を減らさず消費税を上げないとすれば、劇的な企業・個人収益の上昇がない限り、国債を増額するしかありません。それは“将来からの借金”です。今の負担を忌避して子供の代につけ回しすることです。子供を生む意欲は益々減退するでしょう。
消費税率のアップについて、浜田宏一教授(内閣官房参与)の「毎年1%ずつ」という案に、私は賛成でした。
というよりも三年前、勤務先が税務調査を受けたとき、税務調査官に私が話したことです。(そんな雑談が出来るほど、当社は調査官にとって「日当も出ない」会社でした。収入印紙の必要性の理解が異なり、私は不必要と思っていたのですが、何千円かに10%加算されて追徴されました。横目で税務調査官を観察していた事務の女性が後で、印紙不添付の書類を見つけたとき、調査官がほっとした顔をした、と笑いました。それだけでした。誠実にやっています。)
消費税を上げて不景気になるのは、上がる直前に消費が急増し(駆込み需要)、上がった後では息切れして消費が急減するからです。急増に対応した生産力が、大きな負担として残るのです。
エコポイントでも、エコカーでも、結局は消費を先食いし、制度が終わったあと、落ち込みました。
消費の先食い促進という点では、エコポイントも消費税アップも同じと思います。
テレビのデジタル化も期限を付けた消費喚起で、そのあと、パナソニックもシャープも、地獄を見ました。
危険なのは税率よりも、先食いに続く、必然の消費の消滅です。
私が税務調査官に言ったのは、消費税率を毎年1%のアップとし、10年続けて15%に持っていく、というものでした。
これであれば慌てて先食いする意欲も湧かないでしょう。
但し毎年確実に1%は物価上昇するのですから、利息1%未満の預貯金は、減価になります。金が市場に出回る要因にもなるでしょう。
税務調査官の反応は、「技術的にムリだ」ということでした。
すべての会社が決算期が同じならまだ対応できるが、決算期は会社によって異なり、同期の決算書の中に異なる税率のものが併存する、取引先との関係も含めれば錯綜して、税務審査は到底対応できない、というのです。
私は「技術的に可能」と想像しますし、今でも「毎年1%ずつ」10年、というのは、正しいと思っています。
(10/3)
インターネットで見ていると、産経のサイトに下のような文言があります。
「企業は駆け込み需要に照準、価格転嫁に苦心」
「来年4月の消費税増税をにらみ、企業が対応を本格化し始めた。」
「駆け込み需要の期待が膨らむ一方で、増税後の個人消費の冷え込みを懸念し、価格
転嫁が難航するケースも出てきそうだ。」
企業は、いずれ自らの首を絞める、と分かりつつ「駆け込み需要」を取り込もうとし、報道がそれを煽ります。
政府広報が最も腐心しなければならないのは、「駆け込み需要」「先食い」の抑止です。
デフレの脱却とは結局需給バランスの改善(供給以上の需要がある)によってしか為しえません。
潤沢に供給される環境で、物価は上がり得ません。
この半年、企業は「増産」を慎み、流通も報道も、煽りを自粛すべきです。
と言って、おそらくそれは不可能です。
「本能」に逆らうことですから。
そして国外から、いくらでも入って来ますから。
私のお得意先の社長が、ご子息が「消費税の上がる前に家を建てる」というのを制した、と話していました。
「お前のようなのがいっぱいいて、駆け込みが殺到するだろう。一段落のあと需要の低迷が来る。その時になってゆっくり発注せよ。値段は必ず3%以上下がる。仕事も良い仕事をするだろう。慌てるな。」
この人のように冷静な人が増えるよう、マスコミも賢明な記事を提供して欲しいものです。が、それも期待できないでしょう。 |