2014年3月31日       [追記]2014.04.03
日本維新の会・中丸啓衆議院議員の質問
3月19日衆議院内閣委員会においてカトリックに関して

 

桜が、開花宣言が出たと思ったら、もう散り始めたようです。「花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生だ」と、この頃になるとその断片だけを思い出します。それにしても昨日は、きっちり強い風雨がありました。毎年のように思います。そして私は、それを嫌いでありません。

私は敬虔でないカトリック信徒ですが、教会聖職者の政治的言動について色々書いてきました。しかし最近、個人ではほとんど発信していません。梨の礫ですから、張り合いが無いのです。

ところで、この3月19日に、衆議院内閣委員会において、日本維新の会・中丸啓議員より、カトリック教会に関する次のような発言がありました。本日現在公式の議事録は出ていませんので、中丸議員のサイトよりyoutube当該個所を文字起こししました。

『反政府デモ活動への積極的参加することは信者の義務であると宗教指導、中核派や革マル派が主催する活動でも反政府デモへの積極的参加することは信者の義務であると呼びかけ、信者として反政府意識を持つように呼びかけ、反政府活動は信者の義務だと宗教指導。宗教の言葉を引用し、日本型社会構造及び文化意識への批判を行い、反対運動というのは信者の義務であると扇動、憲法改正は戦争を起こす行為であると議論そのものを否定し、また改憲反対活動を信者に義務として奨励し遂行、いわゆる従軍慰安婦なるものの存在を政府に認めるように求める活動は信者の義務として奨励遂行と、ま、このようなことを全国のカトリック教会組織を用いて行っているようなんですけど、ここだけ見れば完全な反社会活動と言わざるを得ない内容なんですけども、』

この件につきましては私たちは有志六名で中丸議員へ質問状を送りました。私たちは聖職者の政治的言動を危惧し、諫言もして来ました。しかし、司教様方から中丸発言の如く、信徒の「義務」として教導された経験はありません。「義務」という言葉が使われた事例は無いと思います。それは国会と言う国権の最高機関で為された発言として重大なことですから、根拠の提示を求めた訳です。先週末に投函しましたので、返事をいただくにはなお数日を要すると思います。(この部分については末尾の補足説明をご参照下さい)。

勿論、「義務」という言葉を使わなくとも、義務と受け留める多くの信徒はいるでしょう。私の周囲にもいます。しかしそれは「示唆」「教唆」であって「命令」ではありません。

非常に微妙な司教発言があることも事実です。
昨年(2013年)8月10日、
『平和憲法を守り、活かしていくために』
のテーマで、「2013年横浜教区平和旬間」行事がありました。

そこで、梅村昌弘司教は、

「戦後日本における最大の危機が迫っています。
憲法改正について是非ご一緒に考えていただけないでしょうか。
一人でも多くの方の参加を願っています。」

と呼びかけています。

そして、「カトリック横浜教区報75号(2013.10)」によれば、講演のあとのミサにおける説教で、梅村司教は、

「キリストがもたらした福音と、九条をはじめとする、日本国憲法の精神はまさに合致する」
と述べ
「改憲は改悪であるということを認識し、反対の立場を示してほしい」
と述べられた。
(註→)

と報告されています。
ミサ祭儀の説教で述べられたということで、これは信徒への義務付けに限りなく近いと思います。宗教施設内における政治活動です。

問題は、「憲法九条がキリストの福音に合致する」と述べていることで、即ち憲法九条護持が宗教活動である、という論理です。(九条平和教と名付けた人がいますが見事な命名です)。福音という言葉も軽くなったものです。「キリストの福音」は、そんなレベルのものなのでしょうか。

本件については私も所属する、『教会の政治的言動を憂慮する会』植田会長名で、梅村司教へ文書を送りました。Webサイトで公開することになるかも知れません。
私たちが知る範囲のカトリック教会の教義に、日本国憲法九条に合致するものはありません。

→[カトリック教会のカテキズム]より
→[教会の社会教説綱要]より


ここまで書いたところで、18:19に私の携帯に中丸啓代議士より電話が入りました。話したのは5分くらいだったでしょうか。私の理解では、下の内容だったと思います。
「自分の手元には詳細資料は無い。赤磐市の佐々木ゆうじ議員が資料を集め意見を付けて外務省欧州局長宛に提出した『意見趣意書』の内容を読み上げたので、詳細は佐々木市会議員のところにある。ついては佐々木議員から野村さんへ連絡させて貰って良いか」
要は、カトリック教会の司教が、「信者の義務」であると呼びかけたという“証拠資料”は、中丸代議士の手元には無いということでした。

18:40に、佐々木ゆうじ赤磐市会議員から電話が入りました。ほぼ20分話したと思います。終わったのが19:00でした。私が確認したかったことはただ一点で、カトリックの司教が、中丸議員のいう“反政府活動”を、「信者の義務」と指示したか、その証拠物件の有無です。

四捨五入の表現ですが、
公開されている、カトリック中央協議会、正平協、「(教会の政治的言動を憂慮する会)植田会長から送られた資料」、それらをまとめて、自分の考えを書き、外務省と中丸議員へ送った、
というようなことでした。要するに「義務」と教導した証拠・根拠は、無い、とは認めませんが、実質そういうことでした。“ご自分の判断”な訳です。

「先生が判断したと同じ判断を私もしています。重々分かっているのです。しかし国会の場で取り上げるのは先生の考えでなく、明確な根拠であり証拠です」といいました。
「それは外務省へ全部の資料を送ったので、外務省が判断するでしょう」
「外務省の“判断”でなく、確たる証拠です。控えは取っていないのですか」
「勿論、とってあります」
「その中に、あるのか無いのか」
「私の理解を中丸代議士に伝え、中丸代議士は質問しました」
「私の理解も先生と同じですよ。しかし必要なのは“理解”でなく、“証拠”です。義務、という言葉を使った事例がありますか?」
どうもずばりの証拠は無いのでした。

大体の様子は分かったので、次のようなことを話しました。
「聖堂(宗教施設)の中で政治活動を行うことは、宗教法人としての税務処理はどうなるのか」「私たちの献金は、お布施なのか、政治献金なのか」、それをやってみなさいよ。持ち込む相手は外務省でなく税務署でしょうが。

(以上のやりとりについては、私の誤解又は理解不足があるかも知れません。本文アップのあと佐々木議員へURLを連絡しますので、修正の申し入れがあれば、直ちに応じるものと致します。)

それからこれは佐々木議員へは話しませんでしたが、私が所属する『教会の政治的言動を憂慮する会』の資料も、外務省への送付資料に含まれている、ということでした。そのように使われていることを、私たちの誰も知りませんでした。会員に配布した資料で公開文書ではないですから、他に使う時は、なにがしかの了解を得るべきと思います。

私は、佐々木議員や中丸代議士の語るようなような受け留めがカトリック信徒の中で為されていることは、多くあり得ると思います。つまり、「義務」という言葉を使わなくとも、義務と受け取る人々です。しかしそのことと、「義務」であると教えた、ということとは、全く違うのです。司教団は、そんなヘマはしていないはずです。政治家は言葉を正確に使わなくてはならない。大成するには、それが必要と思います。

司教団は、中丸啓衆議院議員に対し、事実にないことを国会で語ったことについて、(事実にないことを語ったと判断するなら)、抗議しなければならないでしょう。そうしないと、中丸発言を認めたことになります。

 

(補足説明)4/1 15:47

佐々木ゆうじ赤磐市議会議員より補足説明の電話がありましたので、要旨を記しておきます。以下の記載は佐々木議員の了解と要請によるものです。

  1. 中丸代議士の国会質問では「赤磐市の市会議員が外務省欧州局長宛に出した意見趣意書」という発言で、提出した市会議員の名前は出されていないが、「佐々木ゆうじ」議員である。

  2. 中丸代議士の質問主旨は、「このような質問趣意書が出ているはずであるが間違いないか」という、外務省が受領しているかどうかの確認である。その範囲である。読み上げた文章は質問趣意書の要点であり、即ち私佐々木ゆうじ作成によるものである。

  3. 外務省はその文書を受け取っていると回答した。

つまり佐々木議員の説明は、中丸代議士は中身について調査している訳でなく、外務省に受領の確認をしただけだ、とのことです。まあ実情はそれに違いないのでしょうが、それを承知の上で、司教団が抗議する場合は、少なくとも最初の窓口は中丸代議士になりますね。


[追記] 2014.04.03

昨日(4/2)、3月19日開催の、衆議院内閣委員会の議事録が、公式に出ました。本ページで取り上げた部分を抜粋して、アップしておきます。

中丸代議士発言の中で、つなぎ合わせますと、「バチカン市国から指名されて日本に配属されているいわゆる司教の方々」の言動が、「これはほとんど我が国に関する内政干渉」とあります。この件については、中丸発言の原稿執筆者である赤磐市佐々木ゆうじ議員から電話があった時、それは違うと申し上げました。司教様方は日本国民であり、日本の国政に対して発言する権利を有する訳です。内政干渉は外国人が日本に対して行うことです。間接的なものは知りません。それを言えば、政治家、報道陣の中に、怪しいのはいっぱいいます。私たちが問題にしているのは、「司教」という肩書で宗教的権威のもとに、政治的言動をしていることです。

但し、バチカン・ローマ教皇庁駐日大使がそのような言動をしたならば重大問題です。駐日大使は外交官です。大使がその任地でその国の政治に口出しすることが、どれほど大きな問題か。私たちは2007年に、前任の教皇庁駐日大使アルベルト・ボッターリ・デ・カステッロ大司教へ抗議に近い質問状を出したことがあります。
回答はありませんでした。大使発言の全貌は、従って分かりません。このような引用をカトリック正義と平和協議会(正平協)にされることは、大使の想定外ではなかったかと今でも思っています。つまみ食いされた可能性が高いです。他国政治に口出しする無神経な外交官など、いないでしょう。

いずれにせよ日本の司教団は、中丸代議士に対して抗議すべきです。


(註)本文記述ほぼ4ヶ月後、梅村司教ご本人から、このような言い方はしなかった、と聞きました。

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