2014年6月23日
司教団の病(一)
衆議院内閣委員会、中丸啓議員発言への無反応

 

本件については3月31日に拙論を速報的にアップしました。
今回はより詳細に私の考えを述べてみます。本件は、日頃厳格な政教分離の実行を要求している日本の司教団に対する、政治の中枢、国権の最高機関である国会での発言であります。これに対する沈黙は、それ自体、分からないことです。

3月19日に、衆議院内閣委員会において、日本維新の会・中丸啓議員より、カトリック教会に関する重大な発言がありました。少し長いですが、公式の衆議院議事録より当該部分を下にコピーします。

186-衆-内閣委員会-6号 平成26年03月19日
○中丸委員
(前略)それでは次に、最近、外務省の欧州局の局長宛てに持ち込まれた意見趣意書についてお尋ねします。これは、カトリック教会なんですけれども、岡山県の赤磐市議会議員から届けられている意見趣意書があったと思うんですけれども、バチカン市国から指名されて日本に配属されている、いわゆる司教の方々がどういったことを信者の皆様に対して言っているかということなんですが、ちょっと一例を挙げてみます。反政府デモ活動への積極的参加することは信者の義務であると宗教指導、中核派や革マル派が主催する活動でも反政府デモ活動への積極的参加することは信者の義務であるとの呼びかけ、信者として反政府意識を持つように呼びかけ、反政府活動は信者の義務だと宗教指導、宗教の言葉を引用し日本型社会構造及び文化意識への批判を行い、反対運動をとるのは信者の義務だと扇動、憲法改正は戦争を起こす行為であるとの議論そのものを否定し、また、改憲反対活動を信者に義務として奨励し遂行、いわゆる従軍慰安婦なるものの存在を政府に認めるように求める活動は信者の義務として奨励、遂行、このようなことを全国のカトリック教会組織を用いて行っているようなんです。ここだけ見れば、完全な反社会活動と言わざるを得ないような内容なんですけれども、それについてどうかという趣意書が出ているということなんです。外務省の参考人、きょうは来ていただいていると思いますので、その取り扱いを今どのようにされているか、教えていただきたいと思います。

○長谷川政府参考人
お答え申し上げます。今委員が御指摘の紙は、当方でも受け取っております。日本の国内におけるカトリック教会の動向等について、外務省としてお答えする立場にございませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

○中丸委員
受け取ったということだけだと思うんですが。これは、もうほとんど我が国に関する内政干渉、もっと言えば国内騒乱扇動を組織的に行っているようにも受け取れると思うんですね。これが、カトリック教会がという意味ではなくて、こういう宗教活動からどんどん発端を発していった、昔、オウム真理教という事件も国内にはあったわけですから。そこまでのものとは思いませんけれども、こういう存在があって、外務省として答えられないということであるとは思うんです。国家公安委員長、こういった国内でのそういった、もちろん信教の自由は大事にしないといけない、言論の自由も大事にしないと。しかし、こんな明らかな反政府活動的なものになってきたものというのは、どういうふうに考えていったらいいんでしょうか。御所見をお伺いいたします。

○古屋国務大臣
これは、まず一般論として申し上げますけれども、やはり、諸外国からいろいろな対日の諸工作が仮にあったということで、そういったことは、実は平素から相当我々も関心を持って、警察が必要な情報はしっかり集めています。具体的な中身の言及については御容赦ください。その中で、具体的に違法行為というものがあるということならば、私たちは厳正に取り締まっていく、こういうことが警察の基本スタンスであります。

上を要約して書きますと、
「バチカン市国から指名されて日本に配属されている」司教が、「完全な反社会活動と言わざるを得ないような」言動をしている。「昔、オウム真理教という事件も国内にはあった」「そこまでのものとは思いませんけれども」「こんな明らかな反政府活動的なものになってきたものというのは、どういうふうに考えていったらいいんでしょうか」

それに対して、国家公安委員長は、

「一般論として申し上げますけれども、」「平素から相当我々も関心を持って、警察が必要な情報はしっかり集めています」

と答弁しているのです。

私は司教団が直ちに何がしかの行動を起こすと思いました。問題点は単純です。

  1. 中丸議員の挙げた「活動」を、したのか、していないののか。
    →行為そのものをしていない。
    →行為はしたが、それは宗教活動であって反社会的活動ではない。
    →(上の範囲の中でヴァリエーションあり)

  2. 公安が“必要な情報”を集めている、ということは、国家権力の宗教への介入である。どのような情報を集めたのか、直ちに公開を要求する。秘密にすることは許されない。秘密があってはならない。

(念の為、私は“一般論”として公安が必要な情報を集めることに反対でありません。むしろ「共通善」保護の為に、そうあって欲しいと思います。集めた情報は、当然秘匿すべきです。上は、今までの司教団の主張からすれば、当然出てくると思えるものを書いたのです。)

一昨年2012年5月27日カトリック横浜司教区の貝塚教会(川崎市)において、警察が敷地内に無断で入り、フィリピン国籍の信徒に対し職務質問を行った上、同敷地内で旅券不携帯ないし常時携帯提示義務違反の罪により現行犯逮捕した、という出来事がありました。本件については、主任司祭・本柳孝司神父の報告があります。

ほぼ一週間後の6月5日、横浜教区長名で神奈川県川崎臨港警察署長宛に抗議文を送り、6月12日、同署々長・本山某警視より、行為は「不適切であった」との回答書を取っています。それでも収まらず6月21日、日本カトリック司教協議会・会長池長潤大司教、並びに会員一同名で、松原仁国家公安委員長、片桐裕警察庁長官宛に「要請書」を提出しています。
要請書とはいうものの、

川崎臨港警察署の前記行為に対して重ねて強く抗議します。このことは川崎臨港警察署管内の問題だけではなく、全国レベルの問題でもあります。2012年6月21日開催された司教総会の総意をもって、日本のカトリック教会を代表するカトリック司教協議会会長として貴官に対し、警察が、憲法に規定されている基本的人権を守り、宗教団体の信教の自由を尊重し、宗教活動に対する妨害行為をしないこと、及び教会の周辺においても教会の宗教活動を妨害しないように慎重に配慮することを、管下の警察に周知徹底するため、必要な措置を講じられるように要請します。

という文面から、これは明らかな抗議文であります。

(私の考えは、この抗議そのものに賛成できません。警察からの状況説明が無いので、教会側の資料によるしかありませんが、はっきりしたことは今後、“不審者”が教会に入っても、警察は直ちには動かない、かも知れないということです。何事も“初動”が重要ですが、司教団は自らそれを封じた訳です。権力を「共通善の保護者」としてでなく、その抑圧者と見ているから、こういう抗議になるのです。重大被害が警察の動きの鈍さに原因する時、司教団はその責を引き受けるでしょうか。おそらく知らんぷりでしょうし、何よりも日本の警察は、逡巡することなく動くでしょう。)

二年足らず前に抗議した相手の国家公安委員長(役職)から、“必要な情報はしっかり集め”ている、見張っている、と公言されたんですよ。しかも、国権の最高機関である国会の場で、オウム真理教を例えに出され、反社会的活動とまで言われて。

何故、黙っているのですか。司教団としての信念を、なぜ堂々と述べないのですか。どのような形であれ対応することは、「貝塚教会問題」に比肩できぬ、重大案件ではないですか。本件に黙り込むことは、以後、「司教団声明」からすべての権威を剥ぎ取りますよ。

私は今までに何度か司教様に質問書を差し上げました。回答と言えるものは皆無でした。何故信徒の、真面目な、真摯な質問に、答えないのか。私は商売人ですからその感覚で見ますと、職務怠慢か、能力が不足か、両方かと思います。

私も少し切れてきたので表現が露骨になりますが、司教様方の発言には、ある形があります。そう見えます。

  1. きちんと対応してくる可能性のある相手には、絶対に抗議しない。

その意味では、中丸啓議員などは最も危険な人物です。抗議すれば、喜んで応じてきますね。日本の総理大臣、ましてアメリカ大統領は、何を言っても“相手してくる危険”のない、安全パイなのです。かつて、ブッシュ大統領に抗議した正平協の事務局長がいました。

  1. 信徒の真面目な問には、答えない。

更に私の仲間は、下を加えました。(夙川の河野さんではありません。念のため)

  1. 自分のことは誤りが分かっても絶対に謝らないが、ひとのしたことは、「その人に代わって謝る」のは大好きである。


私は、おそらく読まれることのない司教様方と、読んで下さる可能性のあるカトリック信徒でない方々に向かって、本文を綴っています。今のままの司教団ではだめでしょう。しかし異なる考えを持つ、平衡神経のある司教様方も、必ず、いや絶対に、いらっしゃると思います。声を上げて欲しい。このままでは、「大本営」と同じです。「日本のカトリック司教団」が一番似ているのは、「大日本帝國 大本営」です。議論が出来ない。客観的な資料を並べて分析できない。別な考えを受け入れられない。大本営参謀の中にも戦争反対の人はいました。中国との早期停戦、対米開戦反対、真珠湾以降も戦争の早期終結を具申し続けた人はいました。しかしすべて大声にかき消されたのです。

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本文発信者は「野村かつよし」です。

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