2014年2月8日
NHK籾井新会長発言に対する「毎日」の社説(一)


先月(1月)25日に行ったNHK新会長籾井勝人氏の、記者会見の場での発言について、多くの新聞が批判しています。私は前回の「時事短評」でも述べたように、籾井氏の対応は誠実であったと思います。31日には籾井氏は衆議院予算委員会に参考人として呼ばれ、その発言を糺されました。記者会見後と衆議院参考人招致後の双方に『社説』を以って論評しているのは、私が調べた範囲では「毎日新聞」のみですから、毎日新聞の二つの社説を全文引用しつつ、私の見解を述べてみたいと思います。

籾井発言については、1月26日付朝日新聞掲載の、「NHK籾井新会長の会見詳報」を使わせて頂きます。

その前に、「何が問題になっているのか」、「記者会見とは何か」ということを考えて見ます。

問題になっているのは、私の理解では、「NHK会長という“公的”立場で」「私的な見解を」述べた、ということだろうと思います。

俎上に上がっている発言は、「領土」「靖国」「慰安婦」「秘密保護法」です。就中「慰安婦」問題ですが、すべて籾井さんが積極的に語ったものではありません。質問があったから回答した訳です。

回答は、「私的」な回答にしかなり得ません。質問者はこの問に対して、NHKの“公的”な答えが存在すると思っているのでしょうか。そんなに愚かではないでしょう。そんなものが存在すれば、今までにそれこそ、大問題になっていたでしょう。

だから質問者は、「私的な答え」しか無いことを、分かりきって質問しているのです。それが“私的”である故に批判するのなら、そうした質問はしないのがフェアです。あるいは籾井さん(に限らずこの種の記者会見の当事者)の答えは、籾井さんの発言の通り、
“「しつこく質問されたから、答えなきゃいかんと思って答えましたが、会長としては答えられませんので。「会長はさておき」と言ったわけですよ。じゃあ、取り消しますよ。まともな会話ができなくなる。「それはノーコメントです」と、それで済んじゃうじゃないですか。それでよろしいんでしょうか。”
ということになります。「個人的見解は話せません。ノーコメントです」で済む話ですし、正しい対応はそれしか無い訳です。

つまり、「記者会見」そのものの意味、あるいは意義の否定です。これが日本の「報道」なのです。

 

以上の前提を置いて、毎日新聞・社説の検討に入ります。

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毎日新聞2014年1月28日(火)
社説:NHK会長発言 公共放送の信頼失った

NHK新会長の籾井(もみい)勝人氏が就任記者会見で従軍慰安婦問題などについて、不見識な発言を繰り返した。

いきなりこのような決め付けですが、何を以って「不見識」と断定するのでしょうか。私などは極めて見識のある発言と思いました。

公共放送のトップとしての自覚のなさ、国際感覚の欠如に驚くばかりだ。

何をもって「国際感覚」というのか。外国の主張を慮ることが「国際感覚」なのであろうか。そうであればなるほど、毎日新聞は国際感覚に満ちた新聞である。というか、国際感覚充満の新聞である。日本はどこへ行ったのか?

その資質が大いに疑問視され、進退が問われてもおかしくない。そして、彼を選んだ経営委員会も、任命責任を免れない。

これが実は彼らの目的なのです。しんぶん赤旗、朝日、毎日、中日は、今回の新任経営委員の名が上がった直後から、悲鳴に近い懸念の声を上げていました。
毎日新聞は、
しんぶん赤旗は、

それは正に籾井会長が記者会見の冒頭で述べた、
「たぶん私のやることは、そのへんのボルト、ナットをもう一回締め直すことが主たる任務になるのではないかと思います。社内でも第一にあげているのは放送法の順守です。(中略)職員一同、放送法をもう一度身近に考えて徹底してやっていきたいと思います。」
ということの阻止が目的なのです。

NHKの“偏向”は目に余るものがありました。最近では2009年4月5日に放映された「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー 第1回アジアの“一等国”」の問題があります。東京高等裁判所は昨2013年11月28日、NHKに対し原告に100万円の支払いを命じました。判決文の20ページによれば、
『本件番組は、日本の台湾統治が台湾の人々に深い傷を残したと放送しているが、本件番組こそ、その配慮のない取材や編集等によって、台湾の人たちや特に高士村の人たち、そして、79歳と高齢、無口だった父親を誇りに思っている控訴人の心に、深い傷を残したものというべきであり、』
これは正にNHKの偏向・斜視報道を、咎めているのです。

本件(JAPANデビュー訴訟)について、毎日、朝日、中日、赤旗が、詳しく報じたとは耳にしていません。

2001年1月30日には、[女性国際戦犯法廷 第2回「問われる戦時性暴力」]というのが放映され、政治、報道を巻き込んだ大騒ぎになりました。朝日新聞は当事者になりました。振り返って面白いのは、これほどNHKへの他からの口出しを批判する朝日が、この時はNHKの“編集”を批判し、NHKと口論したことです。私は途中まで経緯の資料を収集しましたが、結末がどうなったか知りません。

(今日はここまでとします。)

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