(5)北朝鮮への経済制裁
ノムラカツヨシ

(1)小泉訪朝
(2)小泉再訪朝
(3)小泉再訪朝を評価する

(4)櫻井よしこ論
(6)敵の意図は、敵しか知らない

 

2004.12.08 17:30
今日は、北朝鮮から持って帰った遺骨が横田めぐみさんのものでなかったとの発表がありました。私は驚きません。めぐみさんの骨でないと思っていました。彼女は生きていると信じます。二人分というのが異常ですが、これには別なメッセージがあるのかも知れません。つまり、これはニセモノであるとあえて知らせる「意志」です。それがどこから来るものか分かりません。
金正日の意志でないと思います。
金正日が既に指揮権を失っているのかも知れません。ダッチロールに入っている可能性があります。

小泉さんには「日朝国交正常化」の積もりは最初からなかった、という私の結論は、上(櫻井よしこ論)に記しました。結局、日本国内のみならず金正日も釣られたのです、正に毛バリで。櫻井よしこさんのように小泉総理が日朝国交正常化を急いでいるという観点からでは、小泉さんの言動が理解できません。その気がない、しかしその気がないと気 づかせてはならない、それが小泉さんのやっていることです。彼は冒険を避け、慎重にねばり強く、一人でも多くの拉致被害者を救出しようとしているのです。その観点からみると、今回のニセ遺骨というふざけた事実をみて、小泉さんはどのように語るでしょうか。周辺では北朝鮮への経済制裁の声が沸騰するでしょう。
私はしかし、

1.きわめて「生ぬるい」と思える対応をする、と思います。
2.制裁をする方が、しないより、未帰還拉致被害者奪還の可能性が大きいとは思えないからです。
3.同時に、放っておいても間もなく金正日は息絶えると判断しているような気がします。(ヤマカンです)
4.ただ、法律、「改正外為法」「特定船舶入稿禁止法」「船舶油濁損害賠償保障法(2005.03施行)」に基づいた規制の強化、パチンコ店等北朝鮮系企業への税務締付はじわっと強めていくでしょう。

いずれにせよ「経済制裁」には入らず、小泉さんは強硬派から総攻撃を食う展開になるように思います。
 

2004.12.09
小泉総理の対応はほぼ私の予測通りでした。この件はあとにして、今回のめぐみさんニセ遺骨(松木さんのも併せて)については、北朝鮮の意図が私にはまったく分かりません。日本の鑑定能力については、前回の松木薫さんニセ遺骨で認識しているはずです。今回は明らかに「ニセ」であることが分かることを前提にやっています。念を入れるように二種類入れています。「ニセモノだよ」と告げているような仕業です。こっちにはサッパリ 訳が分からないが、やつらははっきりした「意図」を持っていると感じます。何でしょうね。????
 

2004.12.10 「経済制裁」への危惧

北朝鮮・金正日体制を攻撃することに、私は反対でありません。ぶっ倒してやりたいと思います。問題はいわゆる「経済制裁」が目的に対して有効な手段かということです。

1.経済制裁の目的→ 拉致被害者の奪回、ということでしょう。ならば、
「経済制裁によって拉致された人の救済の可能性が高まる」
という、その論理的根拠が語られなくてはなりません。私にはむしろ拉致された人への、加害の可能性を高めるものに思えます。

2.経済制裁にどのような方法があるか。→それは北朝鮮にどのような打撃を与えるか。その打撃のどの時点で北朝鮮は参るか。静かに参るか。反撃はないか。

3.反撃がないとするなら、その根拠。

4.反撃の可能性があるなら、→どのような反撃があり得るか。それにどのような対処をするか。

5.中国、韓国は、どのような立場をとるか。
  →予測できる「反日行動」。それに呼応するであろう国内日本人の反日分子。
  →シーレーン、わが国経済水域への中国の意図的チョッカイ。

6.何よりも国内世論が一致し続けるか。→私にはとても信じられません。
  いま声高に制裁を叫んでいる者ほど(家族を除いて)私は信じない。

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今回の北朝鮮のやりかたを、「日本人を騙そうとした」という観点で捉えると、まちがうと思います。奴等は「騙そう」などとしていない。騙すなら二人分四人分という骨の入れ方が理解できない。明らかに「ニセモノだよ」と告げているのです。 「挑発」なのです。日本に、経済制裁をやるならやれ、と煽っているのです。つまり彼らにはそれに対応できる裏付けがあるのです。中・韓のバックアップのみならず、日本の闇ルートもあるでしょう。小出しに 脅すことができる政治家・教育者・宗教家・言論人のスキャンダルを握っているでしょう。日本を中韓から更に遠ざけ、制裁に屈服しないことによってハジをかかせ、国論を分裂・ガタガタにしようとしているのです。

何故か。彼らがようやく、小泉の真意を知ったのです。「小泉の語る国交正常化は“毛バリ”である」と。
今回のニセ遺骨は金正日の小泉への怒りであると思います。だから(経済制裁という)挑発に乗ることは、彼らの思う壺なのです。 小泉にハジをかかせ、何とか一矢を報いたいのです。
それを最も理解しているのが小泉であり、平然と生ぬるい対応をすることこそ攻めなのです。「対話と圧力」といいます。実は、「対話が圧力」なのです。 なぜなら、時間はこちらの味方であり、金正日にはどん詰まりしかないのです。唯一起死回生の方法こそ、日本に「経済制裁」をやらせ、中国・韓国の民族感情を刺激させ、日本の中の親北朝鮮集団を立ち上がらせる。それしかないところまで、金正日は追い詰められていると思います。一番いいのは放っておくことです。間もなく金正日は崩壊するでしょう。

「経済制裁せよ」との声を、私は悪いことと思いません。それはバックグラウンド・ミュージックとして有効でしょう。しかし、小泉は動かないでしょう。「孤高」。小泉純一郎を、私は凄い政治家と思います。

2004/12/14 06:51

Yさん、こんにちは。
コメント、ありがとうございました。

> 経済制裁を発動した場合、北朝鮮より先に日本国内が持たなくなる
> との観点は鋭いと思います。

経済制裁は半年や一年で結果のでるものじゃないと思うのです。いま高揚している(75〜80%が制裁支持という)エネルギーが、数年単位で持続するでしょうか。私には信じられません。足を引っ張る政党、報道機関が出ます。その人たちが使うのは必ず「人道」でしょう。小泉さんがいま「経済制裁」を正式に発動するとして、任期中に結果が出ると思えません。後任の総理が、持続できますかね。持続できなければ、日本は世界の嘲笑を受けると思うのです。

盧武鉉大統領も先月パリで「北朝鮮の崩壊を望まない韓国や中国と、体制交代を求める国や一部の人々と意見が合わなくなっている」(在仏韓国人との懇談会)と述べています。韓国や中国は北朝鮮の崩壊を望まないとはっきり語っているのです。日本の「制裁」がどの程度効果のあるものか分かりませんが、もし金正日体制を崩壊に導くほどの効果あるものとして(制裁という以上、それが目的でしょう)その事態になれば中韓は北をサポートするということです。日本が北朝鮮に与えるマイナスを、中韓は補填すると警告しているのです。結果として借方貸方から北朝鮮科目を相殺すれば、残るのは日本と中韓の対立、ということになります。

その状態において日本国内にどのような言論がわき出るか、本籍地が向こうにあるような日本人・メディアは充満しています。私には目の当たりにイメージできます。日本の制裁は頓挫するか自然消滅するでしょう。残るのは恥辱屈辱であり、これは今に数倍する、より危険なエネルギーを日本人の中に生むでしょう。

私が耐えられないのは、わが国が「恥をかく」ことです。私は、この国が好きなのです。屈辱を受けたくないのです。今回のニセ骨は北の「外道」を世界に示しているのであって、日本が恥をかいたとは思いません。日本が恥をかかされたという人がいますが、私はそう思いません。狂人が私を嘲ったとしても、私は恥をかかされたとは思わない。「恥」は、制裁失敗のあとに来るものです。今すぐ制裁せよと叫ぶ人々は、それが効果をあげぬ場合のイメージはないのでしょうか。必ず制裁が成立すると思っているのでしょうか。金正日が膝を屈すと?

> 犠牲を払っても守るべきことがあるのか無いのか、
> 答えを出さないままいてもよいのか? 

犠牲をはらっても守るべきものがあると思います。金正日をやっつける確かな方法があるなら、日本はやるべきと思います(武力行使はできないんですよ。 その条件でそんな方法があるとすれば魔術です)。経済制裁も、本当に日本がやり通すのなら、私は賛成します。しかしどう考えても日本人は、制裁を持続する、そんな種類の民族じゃない気が します。その点を、私は信用できないのです。そうしただらしない日本人を私はキライでありません。しかし長期にわたる我慢くらべ、いわば陰鬱ないくさに、日本人が適していると思いません。金正日をやっつけるそれ自体は、日本人のみならず人類の責務であると思います。 「答えを出さないままいてもよいのか?」、どうすれば答えが出るのか、分かりません。今しばらくは、こちらから動かない方が、やつは苦しいのではないでしょうか。

昨夜のNHKで小泉総理の談話をききましたが、FNNのサイトにアップされていますのでコピーします。

「(経済制裁を求める声は) それはよくわかりますね。あのような理不尽な、非道な行動をされればね。当然だと思っています」
「今の時点でね、こういう圧力をかけますと言わない方がいいんじゃないですか。対話と圧力、出方を見極める、その方がいいと思いますね」

私は、落ち着いた、堂々とした対応であると思います。日本人は本当に、みんなと一緒になってカッカする総理を求めているのでしょうか。小泉さんが先頭に立って経済制裁を叫んだら、今叫んでいる人々は、それに唱和するのでしょうか。
私は多くの人が、小泉さんが制裁を叫んだら、途端にそれに反対すると思います。マスコミはその最たるものでしょう。

自民党が先にまとめた五段階の経済制裁シミュレーション
(1)人道支援の凍結・延期
(2)送金などの報告義務と輸出届け出義務の厳格化
(3)特定品目の貿易停止、特定の送金などの禁止
(4)特定船舶の入港禁止、貿易や送金などの全面禁止
(5)船舶の全面入港禁止

既に第一段階には入っている訳です。
「船舶油濁損害賠償保障法」が来年3月1日には施行されます。
大声を上げずに国内法を粛々と適用していけばいいと思います。小泉は着々と準備はしているのです。
 

2004.12.14 18:15
産経新聞のサイトによりますと、
【ワシントン=近藤豊和】訪米中の小池百合子環境・沖縄北方担当相は十三日、アーミテージ国務副長官らと会談し、日本人拉致事件をめぐる北朝鮮への経済制裁の可能性について協議した。この中で米側は
「制裁というカードをみせていることが有効だ。実際に始めると大変で、逆に裏をかかれることもあることを経験の中で知っている。タイミング、方法に工夫の余地がある」
と表明し、経済制裁に対して慎重姿勢を示した。

このアーミテージ氏の発言に対して、小池大臣は何のために訪米したのか、と批判している人もいます。私には妥当な、大人の忠告に思えるのですが。
「逆に裏をかかれる」という感覚のない評論家が多すぎます。その感覚のない政治家は更に危険です。
 

2004.12.15
読売新聞サイトによりますと、「北への経済制裁、基本的に支持…米国務副長官」
 訪米している自民党の平沼赳夫は14日、アーミテージ国務副長官、ケリー国務次官補(東アジア太平洋担当)、マイケル・グリーン国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長らと拉致問題をめぐる北朝鮮への経済制裁問題を中心に意見を交わしたそうで、平沼氏によるとアーミテージ副長官は日本が対北朝鮮経済制裁を検討することに米国が消極的と報じられていることについて、「真意が伝わっていない」と不満を示した上で、「(米国は)決して消極的ではない」と基本的に支持する考えを強調したという。ただ、制裁の方法については「軽いものから重いものまで段階を踏んで行うことが大事だ」と述べ、第1段階から大きく踏み込むことは避けるべきだとの考えを示したとしている、と報じられています。

産経=「制裁というカードをみせていることが有効だ。実際に始めると大変で、逆に裏をかかれることもあることを経験の中で知っている。タイミング、方法に工夫の余地がある」→慎重姿勢 ??

読売(平沼氏)=「軽いものから重いものまで段階を踏んで行うことが大事だ」「第1段階から大きく踏み込むことは避けるべきだ」→(米国は)決して消極的ではない。→基本的に支持する考え ??

新聞は記者のコメントをつけず「ナマ」をそのまま出して欲しいものです。テレビのコメンテーターもおおむね余分です。それに早く気づかなければ、新聞・テレビは見放されていくと思います。今もすでに相当進行していると思いますが。

「敵の意図は、敵しか知らない」へ続きます。

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