(附録1) 2004.12.25「産経抄」について
ノムラカツヨシ

(1)小泉訪朝
(2)小泉再訪朝
(3)小泉再訪朝を評価する

(4)櫻井よしこ論
(5)北朝鮮への経済制裁
(6)敵の意図は、敵しか知らない
   (附録2)平成17年小泉総理年頭記者会見より

2004.12.16
産経新聞は私の定期購読紙であり、一番信頼している新聞です。中でも「産経抄」は好きなコラムです。
(はっきり書きますと一番好きなのは黒田勝弘氏の文章で、おそらく、黒田氏の文章故に産経紙をとり続けているのです。それは、黒田氏の批判する対象への愛情ですね。)

「産経抄」にもほとんどの場合うなづくのですが、最近時々、??ボケタカナ、があります。それは私の観点から見た場合(その私の観点なるものが正しい保証はありませんが) 、思慮が浅い なと思える点が散見するのです。
 

2004.12.25「産経抄」

拉致被害者の「家族会」と「救う会」が、北朝鮮に対する経済制裁の是非について衆参両院の全国会議員にアンケートをとった。その報道で注目した点が二つある。一つは回答した議員で「早期に制裁せよ」としたものが82・2%に達した。
 ▼この数字は各種の世論調査で「制裁賛成」とする数を上回っている。「制裁すべきではない」は、わずか1・3%だったという。「この意向は尊重しなければならない」と細田官房長官がいうように、「対話が必要」を一つ覚えのように繰り返す小泉首相も無視できないだろう。

1.「制裁」の目的は何でしょうか。拉致被害者の奪還ですか。鬱憤ばらしですか。
2.当然「拉致被害者の奪還」が目的でしょうが、「制裁」が最も有効な手段ですか?
3.「制裁」の方法内容は精査され承知して、議員たちはアンケートに答えているのでしょうか。
4.「制裁」は必ず成功しますか。金正日は恐れ入りますか。
5.「制裁」しても北朝鮮が恐れ入らない場合、どうするのですか。制裁を中止するのですか、弾をぶち込むのですか。次の段階で眼前に現れる可能性の大きい「選択肢」です。制裁の中止は日本にどのような影響を与えますか。弾をぶち込めば、日本にどのような影響を与えますか。

 ▼もう一つの注目点は、しかしながら回答率は52・8%という低さであること。全議員七百二十一人中、回答は三百八十一人に過ぎなかった。国民あげての関心事であるのに、残りの議員はなぜ無回答なのか。一人一人の名前を出してその理由を尋ねたい。

私も、一人一人の名前を出してその理由を尋ねたい。「制裁賛成者」も「無回答者」も。
賛成者には少なくとも前項の問いかけに答えて貰いたい。

 ▼拉致という国家犯罪をやり、ニセ遺骨で家族や国民を愚弄(ぐろう)した北朝鮮から足元を見られるばかりではないか。先日の鹿児島・指宿で行われた日韓首脳会談でも、北朝鮮問題に関しては日韓両首脳の甘い認識が浮き彫りになった。歯がゆいことだった。

つまり「産経抄」氏は、「経済制裁」による目的達成に疑問を持たないかに見えます。ノーテンキと言えるほど楽天的です。
私自身は、「経済制裁によって目的達成はできない」と思います。なぜなら、私の分析では成功する要素が見出せないからです。従って、「日韓両首脳の甘い認識」とまったく思いません。いまここで「経済制裁」に突き進むことこそ、おそるべき「甘い認識」と思います。 相手は「真人間」じゃないですよ。

 ▼対北朝鮮外交の戦略では、旅人のマントを脱がす「北風と太陽」のイソップ寓話(ぐうわ)がしばしば引き合いに出される。しかし相手は善意の旅人ではないのだ。子供だましのたとえ話を、冷厳な国際関係の非情な現実にあてはめることぐらい愚かでナンセンスなことはない。

「経済制裁」が北風で、小泉さんの「対話が必要」を“太陽”と(そう考えている文章であると思います)、どのような根拠で考えるのでしょうか。「冷厳な国際関係の非情な現実にあてはめることぐらい愚かでナンセンスなことはない」のです、ホント。
「会話」が戦争の一つの形態であることを、この人には想像もできないみたい。

 ▼元「赤旗」平壌特派員の北朝鮮ウオッチャー・萩原遼氏にはたびたび小欄にご登場ねがう。萩原さんは一貫して「金正日との間で国交正常化してはならない」「圧力こそ北を動かす」と主張する。金正日体制を正面から見すえたジャーナリストの結論である。

小泉総理には「国交正常化」をする気はなかった、少なくとも、出来ると思っていない、との考察は、「櫻井よしこ論 」に記しました。先入観なく、ごく素直に小泉さんの言動を分析すると、その結果になります。ジャーナリストの第一必須資質は、対象を素直に見ることです。

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2004.12.28
今朝の「産経抄」より

 ▼・・・・きょう二十八日は「仕事(御用)納め」。歳時記に「古筆も洗ひて御用納かな」(瓜青)の句がでていた。ところでもう一つ納めるものがある。小欄・産経抄も本日をもって筆者交代いたします。それが何と三十五年間も長居をしてしまっていた。

 ▼「戦争に大義は無用である」「(従軍)慰安婦は国家の下半身だった」「反戦平和ほどうさん臭いものはない」「学校教育に強制は不可欠である」「日の丸・君が代のどこが悪い?」などなどと。とにかく時流に逆らうことばかり書き続けてきた。

 ▼そういうへそ曲がりで時代遅れの小欄にとっては、年貢の納め時がきたというべきかもしれない。晩唐の詩人・杜牧の一節に「長空 碧(みどり)杳杳(ようよう)たり/万古 一飛鳥」と。担当は石井英夫でした。ありがとうございました。明日から小欄は新しい視点と切り口で再生いたします。

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正直、最近の「産経抄」には衰えを感じていました。しかし「産経抄」をずっと愛読したことに変わりありません。直前の「経済制裁」については手厳しい批判をしましたが、長年、ずいぶん教えられてきました。石井英夫さん、ご苦労様でした。ありがとうございました。

それよりも最近産経新聞全体にちょっと変な臭いを感じます。産経よ、お前もか、という感じです。舵をきったんかな、という危惧を持ちます。事実をそのまま伝える、変な味付けをしない姿勢を貫いて貰いたいものです。

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